パチンコ「ガイア」債権者に明かした倒産劇の内幕 コロナ後は綱渡り経営、銀行もしびれを切らす

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大山氏による謝罪の後、代理人弁護士から説明されたのは、ガイア倒産に至るまでの詳細ないきさつだった。

ガイアはピーク時の2006年5月期に全国200店舗、売上高5853億円を誇った。しかし2015年以降の規制強化により、パチンコ市場の縮小傾向に拍車がかかると、集客力を維持するために積極的な遊技機の入れ替えを迫られるようになった。

設備投資がかさみ資金繰りが悪化する中、2020年にはコロナ禍が到来し、2カ月間の店舗休業を余儀なくされる。粗利益ベースで約100億円分の機会損失が発生し、実は同年6月の時点で、借入金の返済や仕入れ債務の支払いのための資金がショートしたという。

仕入れ債務の支払いは早期に再開できたが、借入金の返済に窮し、2020年7月から私的整理手続きを開始。店舗の営業再開や旗艦店売却による資金確保により、2022年3月には、金融機関などに自主再生計画案を提示するまでこぎ着けた。金融機関の同意も得て、あとは業績を回復させることで、粛々と債務を弁済していける、はずだった。

9月末の現預金は月商の1割未満に

ところがその後も、業績は低迷したままだった。

収益力が回復しない一方、ちょうど2021年半ばから遊技機メーカーのヒット機種が続き、競合のホールは遊技機の入れ替えを加速させていた。ガイアも置いていかれぬよう、投資を行わざるをえず、そのための借り入れで資金繰りはさらに悪化。説明会で代理人弁護士は、「コロナ禍明けのガイアグループの資金繰りは、つねに綱渡りと言っていい状況であった」と総括している。

ついに2023年9月、同月末期限の金融機関への元利金や店舗の賃料が支払い不可能となる。説明会で配布されたガイアの財務諸表によれば、2023年9月末時点の流動比率(流動資産÷流動負債)は24.5%。これは1年以内に現金化できるような資産が、1年以内に返済する必要がある負債の2割程度しかないことを意味する。現預金は10億円と、月当たり売上高157億円(2023年5月期ベース)を大きく下回っていた。

10月2日には遊技機関連設備メーカーへの支払手形で不渡りが発生。一部の遊技機メーカーと取引がストップし、店舗の従業員にまで混乱が伝わるようになった。コロナ禍を理由に猶予されていた社会保険料についても滞納処分による財産差し押さえを受け、10月31日が期限の約束手形で2度目の不渡りが避けられない状況に追い込まれた。

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