また、鈴木社長は日産や三菱の軽EVを念頭に「うちは後発になるので、先行するメーカーにしっかり学ばせていただきたい」と折に触れて発言している。先行2車種を研究した部分もありそうだ。
後発となったメリットがある一方、焦りはないのだろうか。
サクラやeKクロス EVは2022年6月に発売されたので、スズキの軽EVの発売は3年ほど遅くなる。だが、販売店関係者は「軽EVがまだラインナップにないことで、客を日産や三菱自に取られているというような感覚はない」と話す。
サクラやeKクロス EVの販売価格は補助金ありでも税込み180万円前後からで、スズキの既存の軽の売れ筋の大半よりも高価だ。スズキの軽ユーザーの中心層は価格感応度が高いため、今すぐそちらに乗り換えようという選択にはつながりづらい。
地方はガソリンスタンドの閉鎖が相次ぎ、また政府の政策への対応も含めて徐々に既存の軽ユーザーが軽EVへシフトしていく必要があるにしても時間的な猶予がある。足下の軽EVを市場投入するまでの3年程度の時間差は、あまり問題ではないようだ。
電池のコストが重いEVをいかに安くつくるか
軽EV投入に向けて最大の課題はやはり価格帯になる。
鈴木社長は今年1月の戦略事業説明会で「"軽"にお金を払ってもらえるリミット(上限)は、200万円が1つの基準だと思っている。(軽EVでも)100万円台を何とか達成できないかと思っている」と述べた。
EVが高価になりがちなのはリチウムイオン電池が高いためで、一般的に電池のコストは製造原価の約3割を占めるとされる。コンセプトカーの想定値で示した航続距離230キロメートルを実現するには、現行のサクラやekクロス EVより多くのリチウムイオン電池を搭載する必要がある。
そのうえで100万円台の価格を実現するハードルは低くはない。
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