「OJT偏重」の古い日本の人材育成がやばいワケ 「経営を教える会社」が大事にする育成方針

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あくまで日本企業における平均値なので、企業規模や業種によって実態はそれぞれ異なります。皆さんは、この3万〜4万円という平均値を高いと感じますか? それとも低いと感じるでしょうか? 私は非常に少ないと考えています。欧米の主要先進国ではそれぞれ平均10万円前後が教育研修費に使われると言われていますし、アジアの中国・韓国・シンガポールといった国々においても日本と比べて2倍くらいの予算が割り当てられています。これでは、どんどん日本企業と外資企業との力の差が広がる一方です。

では、日本企業においては人材育成が重要視されていないのかというと、私は決してそんなことはないとも感じています。多くの日本企業において、「我が社の最大の資産は人材である」といった趣旨の発言はいろいろなところで耳にします。これが実態を伴わない嘘も方便のように使われているわけでもないでしょう。では、なぜ同じように人材が育つことの価値を考えている日本企業が、海外の企業と比べて明らかに人材育成予算が少なくなっているのでしょうか?

伝統的に日本企業がOJT好きな理由

日本企業においては、確かにOff-JTに使われる予算は少ないのですが、「人は現場で育つ」という考えのもと、OJT(職場での実務における育成手法)に力を入れていることが多いのです。OJTで人材を育てることはとても大切なことですし、それ自体は素晴らしいことです。

実際に、携わる業務に必要なスキルはOff-JTで学ぶよりもOJTで業務を通じて習得してしまったほうが、効率性が高いとも言えるでしょう。ただし、一方でOJTにはOJTならではの限界があることも見落としてはなりません。

OJTは、目の前の業務に効率よく対応できるようになるためには優れた育成手法なのですが、逆に言えばそこで伸ばせる知識・スキルというのは、その業務でしか通用しないものに限定されてしまうことが多いのです。要は、OJTのみでは、次なるキャリアステップにおいて必要とされる能力や知見を獲得することは難しいのです。

もしかすると、「いや、そんなことはない。事実、私は研修等のOff-JTには頼らずに、OJTの中だけで経営リーダーになるまでに至った」と思われる方もいらっしゃることでしょう。もちろん、それはそれで事実であるとは思いますが、前提となる環境の違いに目を向けることも忘れてはなりません。

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