「OJT偏重」の古い日本の人材育成がやばいワケ 「経営を教える会社」が大事にする育成方針

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さらに付け加えるならば、これからの時代は「人生100年時代」と言われるようになりました。1つの企業、特定のスキルだけで職業人生を全うできる時代ではなくなったことから、至るところでリスキリング(学び直し)の必要性が叫ばれています。AIをはじめとして、さまざまな進化が非常に速いサイクルで訪れる環境下においては、今、目の前で向き合っている仕事に必要なスキルを磨くだけでは足りず、人生100年時代を生き抜くことが難しくなってくるでしょう。これからは、もっと先々を見据えた新たな能力の獲得が必要になってくるのです。こうした現業務で必要とされる能力とは別のスキルや知見を獲得することは、もはやOJTでは不可能に近く、今ほどOff-JTが必要とされる時代は過去になかったのではないでしょうか。

「人的資本経営」の意味

そう考えると、現状の年間3万〜4万円という日本企業のOff-JTにかける育成投資金額は低過ぎると考えていいでしょう。このままでは、日本企業の大きな成長は見込みにくく、日本経済全体としても、失われた40年・50年へと突き進んでいかないかという不安がもたげてきます。

ただ、明るい兆しは、そんな日本においても「人的資本経営」の重要性が叫ばれ、各社がその実践に向けて動きを始めたことです。この「人的資本経営」の中では、人的資本を最大化させるための具体手法が述べられ、リスキリング(学び直し)の重要性について強調されています。今こそ、この流れを踏まえて、各社の育成施策がより充実化されてくれることを願ってやみません。

ちなみに、グロービスにおけるスタッフ1人あたりのOff-JT予算は、少なく見積もっても日本企業全体の平均よりも10倍以上を投じています。

内田 圭亮 グロービス経営大学院教授

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うちだ けいすけ / Keisuke Uchida

グロービス経営大学院教授。慶応義塾大学法学部法律学科卒業、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了。アクセンチュア株式会社にて経営コンサルティングに従事した後、株式会社出前館の上場に寄与。その後、グロービスにて、法人向け人材育成・組織開発のコンサルティング、経営管理本部長を経て、現在はコーポレート・エデュケーション部門マネジング・ディレクター兼中国法人の董事を務める。共著に「グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ」(ダイヤモンド社)がある。

 

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