北海道新幹線「並行在来線」バス転換協議が中断へ バス運転士不足で鉄道代替交通を担えない

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それでも、余市観光協会会長で余市駅を存続する会の笹浪淳史会長は、「鉄道の廃止・バス転換に向けた検討は始まったが、廃線が正式に決定したわけではない。しかし、道や町の関係者は『すでに決まったことだから』とこの話題は避けたがる」とため息を漏らす。その一方で、「ブレーキの壊れた自爆マシンに乗って仕事をしている気分だ」と嘆く余市町関係者もいる。

筆者は道の交通企画課に対して「なぜ、予定通りに協議会を開始し沿線自治体に対して状況の説明をしようとしないのか」「明らかに環境が変化しているのに『すでに決まったことだから』と、なぜ、話題にすることを避けたがるのか」との質問をぶつけてみたところ、担当の山中徹也氏から「次回の協議会の開催についてはまったく見通しがついておらずいつできるのかわからない」「道としては、すでに決まったバス転換という方針に沿って仕事をしている」という回答を得ることができた。筆者は、続けて「ではどういう状況になれば次回の協議会を開催することができるのか」と質問したところ「協議会が開催できるだけの材料がそろえばということだ」と曖昧な回答だった。その後、地元新聞により「今後はほかのバスやタクシー事業者にも協力を求める」といった道の方針が報道された。

泥沼化の道をたどるバス転換協議

同じ並行在来線の函館―長万部間については、新幹線直通構想のある函館―新函館北斗間を除いた新函館北斗―長万部間は旅客を廃止し貨物専用線とする方針が濃厚であるが、余市町関係者が証言するように、道がこれまでのような「自治体間の利害を対立させ、地域が結束して道庁に刃向かわないように巧妙に議論を誘導する」姿勢で協議会を主導し、かつ地元バス会社への根回しを十分に行わない状態で旅客廃止を決定してしまえば、こちらでもバス転換協議の泥沼化は避けられないだろう。

地域公共交通は、鉄道を基幹交通に、バスをフィーダー輸送にしなければ継続が難しい時代に突入したと言っても過言ではない。道はこのままバス転換方針を堅持し自爆への道を突き進むのだろうか。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。

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