北海道新幹線「並行在来線」バス転換協議が中断へ バス運転士不足で鉄道代替交通を担えない
特急ニセコ号の使用車両は、今年からキハ261系はまなす編成に一新された。これまでも秋の定番臨時特急としてノースレインボーエクスプレスやニセコエクスプレス、一般仕様のキハ183系特急形気動車などさまざまな車両を使用して運行が続けられてきた。
特急ニセコ号のおもてなしイベントは、沿線の観光協会や高校とも密な連携が行われていたことも大きな特徴で、ホームでの物販や車内販売では観光協会関係者が携わっていたほか、特定日には北海道小樽未来創造高等学校や北海道ニセコ高等学校の生徒が実際に列車に乗車し、特産品販売や沿線の観光ガイドを行った。
こうした観光列車の取り組みを地域に定着させるためには、地域関係者との関係構築による継続的な取り組みが不可欠で、そのためには相応の労力と手間が必要となる。こうして秋の定番列車となるまで育成してきた特急ニセコ号という観光コンテンツがあるにもかかわらず、そうした事情を無視し一方的に鉄道路線を廃止しようとする道の姿勢については地域のこれまでの努力を踏みにじる行為にほかならない。
地方鉄道を取り巻く状況は大きく変化
長万部―小樽間の廃止の方針を決めたこの1年半で地方鉄道を取り巻く状況は大きく変化した。ドライバーの残業規制を強化する「2024年問題」を目前に、バスドライバー不足が想像以上に深刻化し、道内のバス会社は鉄道代替交通を引き受ける余裕がない状況に陥っている。一方で、地域公共交通活性化再生法が4月に改正されたことで、地方自治体の公共事業を国が支援する「社会資本総合整備交付金」の対象に「鉄道の再構築事業」が加わった。この交付金を活用すれば駅や線路、トンネル、橋、信号などの整備から車両の購入まで国から最大で50%の補助を受けられる。
こうした環境変化により、沿線自治体が「国からの支援がなければ難しい」として鉄道の存続を断念した前提条件は崩れたことになる。さらに、国土交通省は「2024年問題」に関連し今後はバスだけではなくトラックドライバー不足の深刻化も予想されることから、船舶・鉄道の貨物輸送量を今後10年間で倍増する方針を発表した。こうしたことからは、JR北海道が「過密ダイヤで増発が困難」と主張する千歳線の貨物列車のバイパスルートとしての長万部―小樽間活用の可能性も見えてくる。
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