コスモ、「伝家の宝刀」封印し村上氏とバトル2幕へ 「MOM決議」でなく「普通決議」で12月14日に対決

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MOM決議による議案への賛成率は59.54%で可決された。だが、仮にMOM決議で除かれたシティ側の議決権を反対票に、コスモ側の役員持ち株会などの議決権を賛成票に加えると、賛成比率は約45.89%にとどまり否決されていたことになる(旧村上ファンドの推計)。村上氏側は「買収防衛策の決議は実質的に否決だったと評価すべき」とした。

こうした経緯から12月の臨時総会でコスモが再びMOMを導入するのかが注目されていた。だが、今回、コスモはMOMを導入せず、普通決議で採決を行うことを明らかにした。

「6月はシティが所定の手続きに従わずに買い増しを進めた場合、強圧性にさらされるということでMOM決議にした。今回は(村上氏側が)手続きを踏んで趣旨説明書を出していることを含め総合的に勘案して普通決議にした」(コスモ幹部)

株主の売り急ぎを誘発する「強圧性」には、一般株主が十分な検討ができないほど短期で買い上げる「時間的切迫性」のほか、「過少な情報」「市場内での買い上がり」「部分買い付けであること」や「実施主体の不透明さ」などがあげられる。

村上氏側「コスモ社は当然の判断をしたにすぎない」

村上氏側は2024年7月までに約5%買い増すことを表明していて、時間的切迫性は遠のいている。ただ、「情報開示は依然不十分で、村上氏らの属性、市場買い上がりであることなどの問題は残る。理屈上はMOMを使うことは十分できる状況だ」(コスモ関係者)という。

コスモ幹部は、「前回は『MOM決議を行うことに反対』という株主が一定数いた。MOMでなければ議案(の性質)が違う。当然普通決議で勝てると思って議案をかけている」と自信をのぞかせる。

村上氏側は10月24日、「コスモ社が本総会においてMOM決議を強行した場合は経済産業省の指針に反することが明らかであって、MOM決議としなかったことについて、コスモ社は当然の判断をしたにすぎない」とするコメントを発表。そのうえで、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正を促すなど、対立姿勢を鮮明にしている

村上氏側は「(買収防衛策発動議案が)普通決議で可決された場合は、買い付けは行わない」とする。コスモの企業価値を上げるのは現経営陣か、村上氏側か。決着は真っ向勝負でつけられる。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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