事態はまだ流動的ですので、確定的なことは言えません。繰り返しになりますが、今回のハマスの大規模奇襲攻撃自体がそうであったように、私たちの論理や理性では理解できないようなことが起こりえますので、今後も注意深く見守る必要があります。
――そもそもなぜハマスがこのタイミングで、こんな大規模攻撃を行ったのでしょうか。
これについては、さまざまな臆測が飛び交っています。「天井のない監獄」と呼ばれるガザの窮状に耐え切れなくなって爆発した、またイスラエルが右傾化して自分たちがますます圧迫されるのを止めたかった、あるいはイスラエルがサウジと手を結ぼうとしているのを阻止したかった、などと言われています。
けれども、こうした言説は的を射ていないように思います。注意しないといけないのは、こうした理由付けはハマスの言い分を擁護し、テロ行為を容認することにつながりかねないということです。
ハマスの究極的な目標は「イスラエルの殲滅」
今回の攻撃主体はハマスというテロ組織です。ハマスは「イスラエルの殲滅」を掲げています。彼らの最終目標が「イスラム教徒によるパレスチナ全土解放」だからです。
テロとは、一般市民を対象に無差別殺戮を行うことによって恐怖(terror)を植え付け、自らの政治目的を達成する行為です。いかなる理由であれ、一般市民を無差別に殺害するテロを決して容認してはなりません。ましてや今回のように、子供の首をはねて惨殺したり、女子供や老人を拉致するなどの残虐行為は言語道断です。
そしてもう1つ大事な点は、ガザに住む一般市民とハマスを分けて考えることです。ガザの住民もハマスの被害者です。
イスラエル国防軍(IDF)は今回の作戦を実行するにあたり、ガザ住民に対して南部に避難するよう呼びかけています。IDFはテロリストの拠点を空爆する前、チラシをまいたり携帯のショートメールを送ったりして必ず住民に退避を呼びかけます。
けれどもハマスがそれを阻止し、人間の盾として利用します。住民を置いておけば、空爆された際に多数の死傷者が出て、イスラエルが一般市民を虐殺しているというプロパガンダを世界に発信できるからです。そもそも彼らが病院や学校からロケット弾を発射するのもそのためです。そこがIDFの標的になるからです。犠牲になるのはいつもガザの一般市民です。
――この戦闘はどれくらい続くでしょうか。
IDFは、今まさにガザの地上戦に入ろうとしています。甚大な被害を被ったことについて、すでにイスラエル政府を糾弾する声が国内から上がっているのもあり、ネタニヤフ首相はガザからテロリストを掃討すると宣言していますので、地上戦は必ず行われるでしょう。
今、水面下であらゆる情報を収集しているはずです。その準備が整い次第、空軍・海軍の援護のもと、地上部隊がガザに突入するでしょう。IDFの「鉄の剣」作戦は、数カ月に及ぶ可能性があります。
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