にわかに盛り上がる「ライドシェア解禁論」の行方 大物政治家が積極推進、困惑するタクシー業界

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昭和女子大学の八代尚宏・特命教授は、「特区を作ってライドシェアをまずはやってみて、問題があれば順次潰していくというスピード感でやるのが良い。乗務員の高齢化と人手不足という構造的な問題に早急に対処しなくては、消費者が一番割を食うことになる」と危機感を示す。

河野デジタル相はタクシーの現状について、9月下旬の会見で「インバウンドが戻ってきており、京都をはじめ観光地でなかなかタクシーが捕まらない」「過疎地域においては恒常的にタクシーの運行している台数が少ないために、なかなか“地域の足”が確保できない」と言及。そのうえで、「解決策としてタクシーに関連するさまざまな規制緩和をやっていく必要がある」と述べ、ライドシェアについても「公共の交通サービスを提供できない地域を中心に、議論を積極的にやっていきたい」と意欲を示した。

タクシー業界は「全力で阻止する」

こうしたライドシェア解禁の圧力にタクシー業界は反発する。

法人ハイヤー・タクシーの業界団体である全国ハイヤー・タクシー連合会は、9 月末に札幌市で開かれた事業者大会で「今後とも国民に対する安全・安心な輸送サービスを確保すべく、(中略)ライドシェア解禁を全力で阻止する」と決議した。

「タクシー業界が人手不足なのは事実。ただ、一足飛びにライドシェアの議論をするのは危険だ」と訴えるのは都内大手・日の丸交通の富田和孝社長。

「東京は朝の出勤時と夜の帰宅時に需要が集中し、タクシーが捕まえづらい状況になるが、その時間帯以外は需給バランスが取れている。いわゆる海外で一般的な形式のライドシェアが解禁された場合、供給過剰となって乗務員1人当たりの収入が下がり、人材流出によってタクシー業界はさらに深刻な人材不足に陥るだろう。われわれはシフトを組んで24時間をカバーし、公共性を確保しているが、ライドシェアが主流になると公共交通機関としての役割が果たせなくなる可能性がある」(富田社長)。

安全性の問題を指摘する声も多い。

第一交通産業の谷口雅春・常務取締役は「タクシーの運行管理者は、原則的に運転者に対して乗務前に対面点呼を実施しなければならない。安全を担保するための免許証チェックやアルコールチェック、健康チェックなどは厳密に行わなければならない。そうしたことはライドシェアでは難しいのではないか」と首をかしげる。

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