「望まない人事異動」で落胆した彼女を変えた言葉 「100分de名著」の「自省録」放送回を漫画化

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ギリシア語で書いたのは、他の人に読まれたくなかったからかもしれません。彼がノートにギリシア語で書きつける姿を見た人がいたとすれば、一体何を書いているのかと不気味な思いがしたり、不安を感じたりしたでしょう。

さらに、他の誰も読まないので、自分の気持ちを偽らず書けたはずです。そうすることでアウレリウスは自省したのです。自分を省みるためには、自分を客観視することが必要です。アウレリウスは「お前」と自分に呼びかけ、自分自身と対話をしています。ギリシア語では「対話」は「デイアロゴス」といいます。「ロゴスを交わす」という意味です。

自分自身と対話して自分を客観視し、さらに「お前」と呼びかけることで、自己内対話を他者とする対話のように緊迫したものにすることができます。

ノートに書きつけると思考が可視化される

まんが!100分de名著 マルクス・アウレリウス 自省録(まんが!100分de名著)
『まんが!100分de名著 マルクス・アウレリウス 自省録』(扶桑社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

さらに、その対話をノートに書きつけると、思考が可視化されるので、わかっていたと思っても、わかっていなかったことに気づきます。書くことで思考を可視化すると大仰に聞こえますが、この思考には自分の心の動きを知ることも含みます。

「他人の心に今何が起こっているか、それを知らぬゆえに不幸だという人間など見つからない。それに反し、自分の心の動きに絶えず注意を向けられない人は不幸な人間である」二・八

他の人がどう思うかをまったく気に留めなければ生きていくことはできませんが、人からどう思われるかばかり気にしていたら、正しい判断ができなくなります。

この記事の漫画を読む(26ページ)
岸見 一郎 哲学者(監修)
きしみ いちろう / Ichiro Kishimi

1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健と共著、ダイヤモンド社)、『幸福の哲学』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)、『ほめるのをやめよう リーダーシップの誤解』(日経BP)など多数。

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NHK「100分de名著」制作班 (監修)
佐々木 昭后 漫画家
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