マンガ 「望まない人事異動」で落胆した彼女を変えた言葉 「100分de名著」の「自省録」放送回を漫画化 公開日時:2023/11/28 15:30 25ページ 岸見 一郎 哲学者(監修) NHK「100分de名著」制作班 (監修) フォロー 佐々木 昭后 漫画家 フォロー アウレリウスが多忙な昼間の政務から解放されて自由になれたのは、ただ一人寝室に引きこもる時でした。自らは戦場に行くつもりはないのに勇ましいことをいう今日の政治家とは違って、皇帝自身が戦地に赴きました。戦いに明け暮れる中、野営のテントで蠟燭の灯りを頼りに自分の思いを書き留めたのが『自省録』です。あくまで自分のためにだけ書いたノートであり、後に出版され、後世の人が読むとは夢にも思っていなかったでしょう。日本では『自省録』という名前で知られていますが、アウレリウスがつけたわけではありません。誰かいつつけたかはわかりませんが、ギリシア語の原題である「タ・エイス・ヘアウトン」は「自分自身のためのもの」、何か言葉を補うのであれば、「自分自身のための覚え書き」という意味になります。このノートをアウレリウスはギリシア語で書きました。アウレリウスがローマ人なのに母語であるラテン語ではなく、ギリシア語で書いたのは、後に見ますが、彼が傾倒したストア哲学の術語がギリシア語だったからです。ラテン語に翻訳しないでギリシア語をそのまま使う方が簡単だったのです。ギリシア語で書いたのは、他の人に読まれたくなかったからかもしれません。彼がノートにギリシア語で書きつける姿を見た人がいたとすれば、一体何を書いているのかと不気味な思いがしたり、不安を感じたりしたでしょう。さらに、他の誰も読まないので、自分の気持ちを偽らず書けたはずです。そうすることでアウレリウスは自省したのです。自分を省みるためには、自分を客観視することが必要です。アウレリウスは「お前」と自分に呼びかけ、自分自身と対話をしています。ギリシア語では「対話」は「デイアロゴス」といいます。「ロゴスを交わす」という意味です。自分自身と対話して自分を客観視し、さらに「お前」と呼びかけることで、自己内対話を他者とする対話のように緊迫したものにすることができます。さらに、その対話をノートに書きつけると、思考が可視化されるので、わかっていたと思っても、わかっていなかったことに気づきます。書くことで思考を可視化すると大仰に聞こえますが、この思考には自分の心の動きを知ることも含みます。「他人の心に今何が起こっているか、それを知らぬゆえに不幸だという人間など見つからない。それに反し、自分の心の動きに絶えず注意を向けられない人は不幸な人間である」二・八他の人がどう思うかをまったく気に留めなければ生きていくことはできませんが、人からどう思われるかばかり気にしていたら、正しい判断ができなくなります。 このマンガを読む(25ページ) 作品情報 まんが!100分de名著 マルクス・アウレリウス 自省録 https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4594095682/toyokeizaia-22