ヤマザキマリさん「猫に好かれた頑固で親切な友」 家族で移り住んだリスボンで出会った隣人の話

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リスボンで暮らす家を探し、見つけたアパートで出会った頑固で親切な友人、アメリゴとの日々(写真:urf/PIXTA)
漫画家・文筆家として幅広く活躍するヤマザキマリさん。17歳でイタリアに単身で渡って以来、世界のさまざまな土地で出会ったかけがえのない人たちを描いたエッセイ『扉の向う側』から一部抜粋し、とっておきのエピソードを3回に渡ってお届けします(第3回)。

今から15年ほど前の初夏、家財道具や書籍や衣類の詰まった幾つもの荷物と、ダマスカスから連れてきた愛猫を中古のランチャにぎゅうぎゅうと詰め、家族3人で夫の実家のある北イタリアから約3000キロの道のりを、3日掛けてリスボンへ移動した私たちは、到着早々これから暮らす家を探し始めなければならなかった。夏の休暇が始まってしまえば不動産屋は一斉にお休みになってしまうから、その前に移り住む家を見つける必要があったのだ。

築80年の木造モルタルの4階建て

ここだと思う物件に巡り合えたのは、猫も含む家族全員がホテル滞在にしびれを切らし始めていた頃だった。私たち夫婦が敬愛する詩人フェルナンド・ペソアの暮らしていた地域にある、築80年の木造モルタルの4階建ての建造物で、住民は全部で8家族だというが、見た目的にはとてもそんなにたくさんの人が暮らしているようには見えない。「年輩の独身者とか、小さい子供がいる若い夫婦とかですよ」と不動産屋は住民たちを良く知っているような口調で説明し、もともとは小さな診療所だったという3階部分のアパートへ私たちを案内した。

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