列車内「危険物持ち込み」罰則はどうなっている? 過度な検査強化で利便性損なう事態は避けたい

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法令上も必ず手荷物検査をせよ、というわけではなく、あくまでも必要なときに鉄道側の判断で実施できる、とされているにとどまる。2022年の航空法改正で罰則が設けられ、法令上義務付けられている航空機と性質が異なる。

検査を求められた利用者からすれば、「なんで俺が?」と不満をもつこともあるだろう。鉄道側には利用者のプライバシーに配慮しつつ可能な限り納得して応じてもらい、ときには納得しているかどうかにかかわらず従ってもらう必要がある。

どのような方法で手荷物検査実施の判断をするか、対象者をどのような方法で選出するかなどのルール作りが必要である。

利用者の安全意識向上が不可欠

鉄道での安全確保の要請は、今後強まることはあっても弱まることはなさそうである。JR東海のウェブサイトによれば近い将来開業予定のリニア中央新幹線は手荷物検査実施の検討もされているようであり、故意・過失の有無にかかわらず、安全確保に対する諸問題が発生すればするほど対策が強まることが予想される。

検査それ自体はやむを得ないことと思うが、新幹線を含む在来の鉄道で頻繁に行われることになれば円滑な列車運行や鉄道利用が阻害されかねない。改札口での乗車券チェックくらいしか利用のハードルがなく気軽に利用できる鉄道のメリットも失われる。

個々の利用者がいま一度制限物品の確認など安全に対して意識し、鉄道側との間の緊張関係を高めることのないように注意をしたいものである。

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小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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