BMWが2023年5月に発表し、日本でも7月に発売した新型「5シリーズ」は興味深いモデルだ。
なにが興味深いかというと、そのモデル構成。セダンひとつのボディに4つものドライブトレインが用意されている。
ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド(PHEV)、そしてバッテリー駆動のピュアEV(BEV)。日本を含めて最初にデリバリーが開始されるのは、「i5(アイファイブ)」と名づけられたBEVである。
私は9月下旬に、ポルトガル・リスボンでテストドライブをする機会を得て、同時に開発者に取材することができた。
欧州市場ではBEVが50%
i5を含めて新型5シリーズのプロダクトマネージャーを務めた、オリバー・ムンダー氏は、多様なドライブトレインを用意した背景を次のように説明する。
「グローバル市場をみると、5シリーズの需要の内訳はエンジン車(ICE)が大半で、BEVは30%程度。PHEVは10%。圧倒的にエンジン車ですが、欧州市場に目を移すと、BEVが50%を占めます。ドライブトレインの多様性を確保しながら、カーボンニュートラル化を目指すのが、今回の開発の大前提でした」
これらはすべて、ドイツ・バイエルンのディンゴルフィング工場で生産するため、デリバリーについては、ドライブトレインによって時間差が設けられている。
まず、i5が市場に登場し(欧州でも日本でも同様)、2024年にICE、そしてPHEVと続く。ただし、日本法人は「PHEVの需要は多くない」として、導入を見送るという。
一方、4つのドライブトレインはすべて同じシャシーを使うため、解決しなくてはならない問題もある。セダンにしては全高が高くなることだ。
世のBEVにSUV車型が多いのは、2000年代初頭からのSUV流行りというトレンドに加えて、床下に駆動用バッテリーを搭載して全高が上がっても、誰も問題視しないという理由もある。
しかし、「セダンはBMWの中核。『3シリーズ』も『7シリーズ』も、同時にこれからも大事にしていくことに変わりはない」(ムンダー氏)というBMWだけに、5シリーズを(たとえば『クラウン』のように)クロスオーバー車型にすることは避けた。
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