しかるにここで景気が息切れしてしまうと、このあとが厄介なことになる。なにしろ日本経済が「物価と賃金の好循環」を達成できるかどうかは、向こう半年間のパフォーマンスに懸かっている。来年の春闘で賃上げが続けばよし、そうでなかったら「植田日銀」の出口政策も吹っ飛んでしまうし、何より外国人投資家が日本市場を見放してしまうおそれがある。
今年に入ってから9月末までの投資家動向は、外国人投資家による日本株買いは5.5兆円であり、これに事業法人の買いが2.1兆円加わる。この間に売り越しているのは個人投資家が3.2兆円、投資信託が1.4兆円、金融機関は6.2兆円となる。つまり、日本の株式市場は外国人次第ということだ。
その彼らは、今年の春から「物価上昇など、日本経済に本質的な変化が始まっている兆しがある」ということで、日本株を買い始めた。そのお陰で現在の日経平均株価3万円台が実現している。彼らの逃げ足は速いと見るべきだろう。
危うい今の相場、補正予算の規模は少し大きめに
実際に今の株式相場はかなり危うい。10月6日のアメリカ9月雇用統計では、非農業部門雇用者増減数が市場予想を大幅に上回る33.6万人となり、長期金利(10年物米国債利回り)は4.88%まで跳ね上がった。同国の経済が強すぎるために、さらなる利上げを警戒したからだ。そのままであったなら、日経平均は3万円台をいったん割り込んでいたかもしれない。
ところがその翌日、イスラム武装組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃が発生した。超保守派のネタニヤフ政権は、当然のことながら強硬な反撃手段に出る。双方の犠牲は拡大しつつあり、中東情勢の混乱は世界に緊張をもたらしている。
その結果、投資家が安全資産を求める動きから、アメリカ国債が買われて10年物利回りは4.56%にまで急落した。つまり、中東の地政学リスクが表面化したために、今週の日本市場は「大きな株高とわずかな円高」に振れたのである。
いやもう、かなり高度な「オクトーバー・サプライズ」と言わざるをえない。確かに「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」なる相場格言はあるけれども、市場原理の「無常さ」を感じさせる出来事である。
問題はこれから先だ。今後の中東情勢は予断を許さない。今後の世界経済は、ウクライナとパレスチナという2つの戦闘地域をにらみつつ、石油価格の動向などにも一喜一憂しなければならない。そして、国内は景気の息切れにも注意が必要だ。
20日には臨時国会が召集され、岸田内閣は補正予算の編成に乗り出すという。以前の筆者は「こんなコロナ明けの時期に経済対策だなんて……」と思っていたけれども、ここは念には念を入れるほうがよさそうだ。補正予算の規模は少し大きめにするほうがいいかもしれない。
(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)
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