「イスラエル攻撃」が世界経済にもたらす新問題 中央銀行のインフレ鎮圧は一段と難しく
ところが、石油供給国の中にはそれとは違う立場をとるところもある。たとえば、イタリアへの天然ガス輸出を増やしているアルジェリアは、ガザ地区の空爆で対抗したイスラエルを非難した。
先週末の戦闘が起こる前から、エネルギー転換はヨーロッパ経済に打撃を与えていた。IMFは、ユーロ圏20カ国の成長率は2022年の3.3%から今年は0.7%に鈍化すると予測している。ヨーロッパ最大の経済大国ドイツに至っては0.5%のマイナス成長という予想だ。
金利上昇、長引くインフレ、エネルギー価格高騰の余波によって、イギリスの成長率も2022年の4.1%から今年は0.5%に鈍化すると予想されている。
サハラ以南のアフリカ各国も景気減速に陥っている。来年の成長率は4%に好転が予想されているとはいえ、今年の成長率は3.3%に縮小する見通しだ。
これらの国々の多くには、巨額の債務がのしかかっている。債務レベルは平均して同地域のGDP(国内総生産)の60%に達しており、10年前から倍増。金利の上昇が返済コストの増大につながっている。
債務、気候、中国失速も絡む複雑方程式
こうした次世代のソブリン危機(公的債務危機)ともいえる状況は、地政学的な対立の激化に加え、グローバルなサプライチェーン(供給網)の見直しに世界が直面する中で起ころうとしている。
また、開発途上国における壊滅的な気候変動の影響を緩和するには、今後10年以内に数兆ドル規模の資金が新たに必要になるという試算もあり、状況を一段と複雑なものにしている。
政策立案者が直面する最大の疑問の1つは、中国経済の低迷が世界にどのような影響を与えるかだ。IMFは、中国の成長見通しを今年2度下方修正しているが、10日には中国の消費者信頼感は「低迷」し、鉱工業生産も鈍化していると発表。アジアの産業サプライチェーンを構成する国々が、中国経済失速の影響にさらされる可能性があると指摘した。
(執筆:Alan Rappeport記者、Patricia Cohen記者)
(C)2023 The New York Times
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