「イスラエル攻撃」が世界経済にもたらす新問題 中央銀行のインフレ鎮圧は一段と難しく
石油市場はすでに神経質な動きを見せている。ヨーロッパ中央銀行の元調査局長で、現在はロンドン・ビジネス・スクール教授のルクレツィア・ライヒリン氏は、「一番の疑問はエネルギー価格がどうなるかだ」と話した。
ライヒリン氏が懸念するのは、原油価格の新たな高騰が、アメリカ連邦準備制度理事会をはじめとする各国の中央銀行のさらなる利上げ圧力となる展開だ。ライヒリン氏によれば、金利の上昇はすでにあまりに大きく、あまりに速くなりすぎている。
エネルギー価格については、「ロシアに加え、今では中東という、2方面の問題に私たちはさらされている」と言う。
多重危機で足を引きずる世界経済
IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリヴィエ・グランシャ氏は、足元で起きている原油相場の上昇が続くかどうかを判断するのは時期尚早だとしながらも、高騰が続いた場合は、原油価格が10%上昇すると世界経済は圧迫され、来年の経済規模は0.15%縮小し、インフレ率は0.4%上昇することが研究によって示されていると語った。
IMFは最新の世界経済見通しで景気回復の弱さを強調。今年の世界成長率見通しを3%に据え置く一方で、2024年の見通しを2.9%に若干下方修正した。アメリカの今年の成長率見通しは上方修正した反面、ユーロ圏と中国の成長率見通しは引き下げ、中国の不動産部門の苦境が悪化していると警告した。
「世界経済は足を引きずっており、なお全速力にはほど遠い」。グランシャ氏はそう語り、気候変動によって自然災害が大規模化していく可能性など一連のリスクに言及、中期的に「状況はさらに悪化する」と付け加えた。
中でもヨーロッパ経済は、世界的な緊張の高まりのあおりをもろに食らっている。2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ヨーロッパ各国政府はロシア産天然ガスへの過剰依存から脱却しようと躍起になってきた。
そうした取り組みは、中東の供給元を頼ることでおおむね成功を収めている。
ヨーロッパ連合(EU)は先週末、速やかにイスラエルとの連帯を表明し、ガザ地区を支配するハマスの奇襲攻撃を非難した。