むしろ「AIが仕事を奪ってほしい」人手不足の極地 円安で増える外国人旅行客、減る外国人就業者
一方、そうした需要要因に限らず供給要因にも目を向けたい。
周知の通り、パンデミックの3年間(2020~2023年)で旅行や外食などの経済活動が「要請」という名の下に半ば強制的な自粛を強いられ、政策的な負荷が局所的に集中したのが日本だった。
その結果、就業者が宿泊・飲食サービス業界から退出し、戻ってこなくなってしまったという労働供給上の制約も人手不足につながっていると推測される。
宿泊・飲食で外国人就業者が抜けている
総務省「労働力調査」によればパンデミック直前の2019年と2022年について業種別就業者数を比較すると、宿泊・飲食サービスの減少幅(マイナス9.5%)は群を抜いており、これに建設業のマイナス4.2%が追随している。いずれも短観において大きな人手不足が示唆される業種だ。
また、これらの業種は外国人労働者に依存していた業種としても知られる。そこで外国人就業者の業種別シェアを2019年と2022年で比較すると、やはり宿泊・飲食サービスから外国人就業者が抜けている様子が浮き彫りになる。
パンデミックの最中、他国対比でひときわ長引いた水際対策は鎖国政策とも揶揄されたが、その結果、日本から締め出されてしまった外国人就業者はいるだろうし、今となっては大幅な円安により日本で働くインセンティブも大きく削がれている可能性が高い。
宿泊・飲食サービスや建設は、需給両面から人手不足の圧力が高まっているのが実情と見受けられる。
当面のインバウンド需要がすぐに収束しないのだとすれば、これに携わる就業者の名目賃金は上がりやすく、また提供されるサービスの価格(端的には外食代やホテル代など)も上がりやすくなる。確実に日本の一般物価を押し上げる話だ。
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