日本で一番買われているお化けファンドの「正体」 新NISAを前に、0.1%切る壮絶な価格戦争を主導

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もっとも、三菱UFJの独走も、永遠ではない。

異変が起きたのは今春だ。

4月にはみずほ系のアセットマネジメントOneが「たわらノーロード」シリーズについて信託報酬率を引き下げ。同月に日興アセットマネジメントも「Tracers」シリーズで続いた。

すかさず7月には業界最大手の野村アセットマネジメントが「はじめてのNISA」を新規設定する。中でも、「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」の信託報酬率は当時、三菱UFJアセットのオルカンの半額近くに設定し、あからさまな対抗商品といえた。

そして9月、先を越された三菱UFJアセットが「他社が当社より下回る場合は引き下げる」の公約どおりに値下げし、信託報酬率の最低ラインが年0.05775%で並んだというわけだ。

国内外の運用会社が入り乱れる展開に

過熱するばかりのインデックスファンド戦争。資産運用で負けられない野村アセットはファンド品質の維持・向上のため、2030年までには「今ある投信(700本)を半分程度に絞り込む」(小池広靖・野村アセット社長)方針を決めている。インデックスファンドで持続的に残高を拡大しながら、アクティブやバランスファンドも含め収益の多様化を探るつもりだ。

かつて2000年代、「グローバル・ソブリン・オープン」(グロソブ)で一世を風靡した国際投信投資顧問は、業界再編を経て、10月に三菱UFJアセットマネジメントへ社名変更。ついに「国際」の名前は消えることになった━━。

岸田文雄首相は「資産運用立国」を実現するため海外の資産運用会社の参入を促進する考えで、世界最大手の米ブラックロックなどがさっそく呼応している。金融庁も国内の運用会社について、系列の親会社の意向に左右されない、強い運用会社の育成を目指す。これから国内外の運用会社が入り乱れ、次の「eMAXIS Slim」が生まれるかもしれない。

加藤 光彦 ライター

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かとう みつひこ / Mitsuhiko Kato

慶應義塾大学卒業後、女性誌を経て、東洋経済新報社に入社。編集局でゲームや電力業界を担当、その後ビジネスプロモーション局へ異動。現在は会社四季報執筆等に従事。

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大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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