日本で一番買われているお化けファンドの「正体」 新NISAを前に、0.1%切る壮絶な価格戦争を主導

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投信における運用コストは投資家にとってファンド選びの重要な判断材料の1つだ。運用会社によって信託報酬などコストに関する開示の仕方は違う。三菱UFJアセットは、ファンドで負担したコストについて投資家の理解をより得られるよう、目論見書で監査費用や保管費用も含めた「ファンドの総経費率」を開示している。

同社の代田秀雄常務はコストを削減するために「運用報告書を電子版のみにして印刷代や配送代まで削った」と振り返る。

ほかにも運用面では、売買頻度を減らすことで売買手数料を下げたり、銘柄入れ替えを工夫してトラッキングエラーを極力小さくしたり。そうした細かい“職人技”をコツコツ積み上げているわけだ。舵を取るファンドマネジャーについても、大手証券系の運用会社にありがちな定期的な人事異動でなく、実績を挙げた者には継続してついてもらうという。

単に費用を削るばかりではない。同社の場合、SNSなどを利用したファン作りが実にうまい。

商品をより深く知ってもらうべく、ブロガーミーティングやファンミーティングを定期的に開催。代田常務自身、厚切りジェイソンさんなどお笑い芸人との対談でメディアに頻繁に登場、PR担当と化している。そのかいあって投信ブロガーが選ぶ「Fund of the Year」ではオルカンが4年連続1位を受賞。著名なインフルエンサーに拡散してもらうことで、さらにファンを獲得するという、今風のマーケティングで突き進む。

薄利で未来の”資産家予備軍”取り込む

何といってもインデックスファンドはボリューム勝負だ。「あの安さでは儲からない」(同業他社幹部)と揶揄されるが、例えばオルカンの場合、純資産総額1.4兆円に信託報酬率(運用会社の取り分である0.0175%)を掛けると、単純計算でも年2億〜3億円の収益にしかならない。

それでも続けるのは、看板である「eMAXIS Slim」を入口に、投信のビギナーたちを取り込みたいからだ。次はアクティブファンド、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などにも広く展開できる。新NISAだけでなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)も見据えれば、彼らは未来の資産家予備軍でもある。

インデックスファンドでは、資産残高に応じて指数算出会社に支払う、ライセンスフィー(指数使用料)も見逃せない。残高が増えるほどフィーの割合が小さくなるため、全体のコストパフォーマンスが向上する。同社では今後、ファンドの持つ現物株を証券会社に貸し付けて品貸料を徴収(レンディング)することなども、随時検討していくという。

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