経営危機の河西工業が返済期限を猶予された事情 日産支援で9月は乗り越えたが問題解決は遠い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2020年以降、自動車部品メーカーに取り巻く事業環境は急速に悪化した。コロナ禍や世界的な半導体不足を受けて自動車メーカー(完成車メーカー)の生産が落ち込んだからだ。

新車需給の逼迫でインセンティブ(販売報奨金)を削減できた自動車メーカーの収益がむしろ高まったのに対し、自動車メーカーの生産計画をもとに材料や人員を調達し生産準備を整える部品メーカーは、計画通りの生産ができなくなったことで固定費負担が大きくなった。

ほとんどの部品メーカーは似た状況にあるが、とりわけ河西工業の業績が悪化したのには大きく2つの理由がある。

河西工業が特に厳しい理由

まず、主力の日産向け売り上げが大きく落ち込んだこと。

日産向けは2018年度に1339億円、全体の58.9%あった。それが2020年度には704億円とほぼ半減、売上比率は46.1%まで低下した。2021年度、2022年度と多少上向いているものの、コロナ前の水準には戻っていない。売上高の約2割を占めるホンダ向けも似た軌跡をたどっているが、日産向けの落ち込みがより大きかった。

次に事業の特性がある。ドアトリムなど内装部品は車種によっては仕様が3桁に及ぶこともあるという。しかも、日産からの生産計画は直前に車種構成が変更されることも多く、販売台数の減少以上に生産効率が悪化しやすい。

こうした事情から、河西工業は減産分の補償を日産側に請求していたが、同じように他の日産系部品メーカーも減産の影響を受けていることから、日産は河西工業だけ補償することに慎重だったようだ。

しかし、9月の返済期限が近づく中、それが延期されなかった場合、河西工業からの内装部品の供給が止まることが現実味を帯びていく。日産としてもサプライチェーンの見直しが必要になるが、短期間に実行することはできない。最終的に日産が河西工業を財務面で支援するほか、同社が策定する経営再建計画にも協力する意向を銀行団に示したという。

次ページ期限延長でも先行きは厳しい
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事