経営危機の河西工業が返済期限を猶予された事情 日産支援で9月は乗り越えたが問題解決は遠い

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もっとも、問題を先送りしただけで本質的な解決とは程遠いことは誰の目にも明らかだ。

1990年代には約2割あった日産からの出資は2000年代前半のゴーン改革を通じて解消されている(記者撮影)

河西工業はこれまでアメリカの一部工場の売却など、海外事業の見直しを進めてきた。特に赤字幅が大きい北米事業ではコンサルタント企業を入れて現地人員の削減といった合理化に着手している。だが、欧州拠点でも赤字が続いており、経営再建に向けては海外拠点の一段のリストラが不可欠だ。

日産向けビジネスの先行きが見通せない

日産の世界販売台数は2017年度の577万台をピークに凋落が著しい。カルロス・ゴーン元会長の逮捕後の経営混乱やインセンティブ漬けになったアメリカでのブランド毀損の影響に加え、2020年以降はコロナ禍と半導体不足もあり、2022年度は330.5万台まで縮小してしまった。

ゴーン元会長時代に拡大路線を追い求めた日産は最盛期に720万台の生産能力を持っていた。2019年以降は内田誠社長のもと事業構造改革計画「日産ネクスト」を断行。インドネシア工場とスペイン工場を閉鎖して生産能力を540万台にまで縮小したが、依然として過剰な生産能力を抱えている。

この先も不透明感が漂う。販売は半導体不足が解消に向かうことから2023年度は年初に400万台計画を掲げたものの、中国市場の不振を受けて7月に370万台に下方修正を余儀なくされた。中国は日産の販売台数の約3割を占める最大市場だが、急速なEV(電気自動車)化とBYDを中心とした中国現地メーカーの台頭で、日系を含む海外メーカーの販売台数、シェアとも急速に落ちている。

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