インディ・ジョーンズに米諜報部が依頼した真因 「金銭的価値」「客観性のくびき」から自由な存在

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確かに考古学者は未だ見ぬ遺跡を探しに海外に出かけたり、人跡未踏の地に赴くこともあるでしょう。

しかしそれは手段でしかありません。

一般的な考古学者であれば、遺跡を見つけるのは人類の歴史を再構築するためですし、土器や石器、土偶や埴輪を発見するのはその遺構の性格を決定づけるためのはずです。

また考古学者が遺跡や遺物を発見したならば、まずは何も手に取らず、できるだけその状態を保つように心がけるでしょう。考古学者の代名詞である発掘調査は、一方では遺跡の破壊行為だとも言われます。

だから再現性があるように遺跡や遺物がどこから発掘されたのか、座標を測り図面に落とすなど、科学的手法によって客観的に保存することが求められます。

金銭的価値では動かない人間

しかし本作の冒頭シーンにもあるように、インディは南米の現地民の神殿に潜入し、宝物を取ってきてしまいます。その宝物を持ち上げた瞬間、盗難防止の仕掛けが作動してしまう。そのせいでピンチに陥るのですが、なんとか機転を利かせて脱出します。インディ・ジョーンズの面目躍如です。

でもよく考えてみると、なぜインディは危険を冒して宝物を取りに行ったのでしょうか。人類にとって重要な宝物を見つけに行くという意味では、一般的な考古学者と同じように人類史に関心があるのかもしれませんが、その宝物をすぐにその場所から取り上げてしまう時点で、可能な限り科学的なプロセスを経る考古学的手法によって扱おうとは考えていないようです。

インディの関心は明らかに宝物自体にあります。むしろ彼は宝物を命懸けで取ってくる冒険家だと認識されていたのでしょう。そうでなければ、アメリカ諜報部も大切な宝物をナチスの手に渡らないようにしてほしいと頼んでこないはずです。

とはいえもう一方で、インディは単なる冒険家とも思われていません。単なる冒険家が宝物を探すのであれば、その価値は金銭的な尺度で測るはずです。

つまりその冒険の危険度と宝物の価値を天秤にかけ、仕事を受けるか受けないかを判断する。

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