中学受験生の親がもつべき「正しい"狂気"」の正体 『二月の勝者』最新刊の見どころを作者が解説

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高瀬:さらに第2章以降では、子どもを思い通りにする方法があるんじゃないかってところから相談が始まっていますよね。

渦中にいるとこんなに狭い視野になるよね、というのをちょっと思い出して、ゾクッときました。そして、なぜこんなに視野が狭くなっちゃうのか、中学受験の親の心理状態がおおたさんのカウンセリングによってつまびらかにされていきます。

おおたとしまさ/教育ジャーナリスト。著作は80冊以上。近著に『中学受験生を見守る最強メンタル!』(光文社)がある(画像:おおたとしまささん提供)

おおた:「子どもがこんな状態なんですけど、どうしたらいいですか?」って相談に、答えを出さないで、問い返すという意地悪な本(笑)。

高瀬:でも、なぜこんなふうになってしまうのか、じゃあどうすればいいのかを、「内なる魔物をてなずける」という最終章で簡潔に提示してくれていますよね。その結論が、その通りだなと思いました。

「悪い狂気」と「正しい狂気」の違いは何か?

おおた:「なぜこんなふうになってしまうのか」というフレーズから思い出すのは、『二月の勝者』第9集で黒木が教育虐待を回想する場面で言う「なぜ一見、常識的で理知的な親ほどこんな状況に陥りやすいのか。なぜ、こんなにも『悪い意味』での『狂気』が湧き上がるのか」です。

第18集でようやく「正しい狂気」が明示されていましたね。それが今回の私の本のテーマとぴったり重なります。

高瀬:皿投げて割れちゃったり、鬼の形相で子どもに勉強させたりというのを「狂気」だとずっと思われてしまっていたところがちょっと……。漫画を知ってもらうために第1集で「父親の経済力と母親の狂気」というセリフを意図的にもってきたわけですが、真意を開示できるまでは私も正直つらかったですね。

おおた:私も最初は、「何言ってんだこいつ」って黒木のことを思いましたよ(笑)。でも漫画をちょっと読んでいくと、「いや、きっとこれには深い意味がある」とわかりました。

高瀬:すべての読者さんがそう読んでくれる訳ではありませんからね。狂気という言葉だけが独り歩きして、ドン引きさせたり、勘違いされたまま流布したり、あるいは教育虐待の被害者が傷ついたりということがあったらいけないなとずっと思っていました。

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