中学受験生の親がもつべき「正しい"狂気"」の正体 『二月の勝者』最新刊の見どころを作者が解説
おおた:今川さんと原くんのところは、親が求めている学校のランクみたいなものがある。子どもの実力は届いていないのに、その現実から親が目を背けてきた。でもとうとうどこにも合格をもらえていないという現実を受け入れざるを得なくなる。そこから親子がそれぞれにどう変容していくのか、ですね。
高瀬:子ども本人もここにきてやっと自分の意思を言えた。それを親がようやく認めていくところが第19集でいちばん見てほしいところです。
おおた:2月4日、5日って、毎年私のところにも必ず何件か知人からの連絡が入るんです。「まだどこも合格をもらえていないんだけど、どうすればいいかな?」って。
その状態で、まだ入試を受けに行く……。ある意味での中学受験における極限状態が第19集では描かれていますよね。島津くんのふてぶてしさが戻ってきているところも個人的には嬉しかったですけど。
高瀬:ですです。気づいてもらえて嬉しいです。
第1志望不合格で泣いた女の子
おおた:それと、原くんのお母さんとの電話で、黒木が「人は……必ず……頑張って……努力しなければ、いけないのでしょうか……」ってぼそっと言いますよね。あれ、すごく気になったんですけど。
高瀬:そこを拾っていただけるのはすごく嬉しいです!
おおた:あれは伏線として、どこかで回収されるんですか?
高瀬:回収するつもりです。入試本番の熱いシーンがずっと続いて、やっぱり頑張ることが美しいよねという気分に読者さんもなってしまっていると思うんです。
でも、頑張ったから認めるみたいなものでもないよねというのも伝えたい。親がそう思ってしまうと、子どもを追いつめることになりかねないので、作者として責任をとらなきゃいけないと感じています。
おおた:それは大事なメッセージですね。
高瀬:おおたさんの新刊『中学受験生を見守る最強メンタル!』の冒頭にも、2月2日の夜に第1志望不合格がわかって、「ごめんなさい」と泣く女の子が出てきますよね。
おおた:それが象徴的ですよね。子どもは実は、自分が第1志望の学校に通うことよりも、親を喜ばせたい気持ちのほうが強い。きっと本人も気づいていないけど。だからそういう言葉が出ちゃうんですよね。