オーストラリアは日本の潜水艦を買うのか

外交問題というより日本国内に横たわる課題

通常、動力型攻撃潜水艦は広く世界に普及しているが、その開発・建造能力を持つ国は極めて少ない。今回、オーストラリアから技術情報の提供を要請された日本、フランス、ドイツ以外で通常動力型潜水艦の建造能力を持つ国としては、ロシア、中国、スウェーデンといったところだが、ロシアと中国を共同開発・建造のパートナーとすることはオーストラリアの外交政策からいってありえない。

現在運用されているコリンズ級潜水艦は、スウェーデンのコックムス社が設計しており、実績面では有利だが、騒音が大きく、また不具合も数多く発生していることから、オーストラリア海軍の評価は極めて低い。このためオーストラリアのアボット首相は今年2月、スウェーデンが20年以上潜水艦の新規建造を行なっていないことなどを理由に、選定コンペから同国を排除し、日本、ドイツ、フランスの3カ国を選定コンペの対象とすることを明言している。

フランスはチリ、マレーシア、インドなどへの潜水艦の輸出実績がある。ドイツも、イタリア、韓国などに輸出実績がある。それに対し、潜水艦はおろか武器の輸出実績をほとんど持たない日本は、選定コンペでは不利な立場にあるとの見方もある。ネット上では「しょせん日本は当て馬」との意見も見受けられる。しかし、この見方は正しくない。

当初は輸入を目指していた

実のところオーストラリアは、当初、日本で建造した「そうりゅう型」をそのまま輸入する意向を示していた。ただ、日本側には防衛装備移転三原則で完成品の輸出を認めた分野を、輸送、救難、警戒、監視、掃海に関連したものに限定しているため、完成品を輸出することは極めて難しい。

また、オーストラリア側にも日本で建造した潜水艦を輸入すると、国内の造船所の雇用が喪失するため、産業界や野党の労働党からの大きな反発を受けた。こうした、それぞれの事情から完成品の輸入という方針を転換し、コンペによって選定した外国との共同開発・生産が決定した。

選定コンペという形になった現在でも、オーストラリア側の意向は変わっておらず、依然として日本は有利な立場を維持し続けている。5月13日から15日までの3日間、横浜で日本初となる武器展示会「MAST Asia 2015」が開催されたが、オーストラリアはこの展示会に参加した企業や組織の中で最も大きなブースを出展し、自国の造船業界の現状のアピールに務めていた。

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