株の暴落は、こんな時に突然やって来る 2年前の5月23日にも大暴落があった

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しかも「価格面でゆがみを生じるので、やりすぎると反動がある」(大手証券アナリスト)面は否めないが、需給面ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に代表される「クジラ」の存在が支える。今の日本株を見ると、国内要因を見るだけでは、大崩れしにくい状況に見える。

2000年の高値を意識するなら、次の大きな節目は、日経平均株価でいえば2万0833円、TOPIXは1757ポイント(22日は1647ポイント)ということになる。現在120円台後半から121円台前後にあるドル円レートが今後も円安基調で推移するなら、日経平均株価のほうが早くこの節目を達成する可能性もある。

日本株は外部要因には強くない

だが、どんなにクジラの存在が「絶大」でも、日本株の需給は外国人投資家を抜きにしては語れない。海外でなんらかのきっかけがあれば外国人投資家の逃げ足は早い。PER(株価収益率)だけで見れば割安に見える日本株も、あくまで利益予想にもとづくものであり、過信は禁物だ。

「債券の巻き戻しも一応おさまった今、当面の問題といえばギリシャ問題くらい。ただマーケットはそれほど大きな材料とは見ていない」(前出のストラテジスト)。となると、ますます「Sell in May」(5月に売れ)どころか、「5月はこのまま買え」ということになる。

ここからもう一段の上昇があるかどうかはわからない。少なくとも一つ気をつけておきたいのは中国だ。

中国は昨年11月以来、すでに3度の金利引き下げを行っている。上海総合指数も、5月21日現在で4500ポイント台にあり、一見堅調に見える。だが上昇を牽引しているのは、主に需給だ。中国では2010年3月末に信用取引が解禁されたが、この1年で信用残高が膨張。当局がたびたび規制強化を検討する事態になっている。つまり、上海の株価は、実態よりも需給面から買われ、割高になっている可能性がある。

2年前の5月23日の暴落も、実は直接の引き金の一つが中国だったことを覚えている投資家がどれほどいるだろうか。HSBCがこの日発表した同国の5月製造業PMI(購買担当者景気指数)が49.6となり、改善と悪化の節目である50を7カ月ぶり割れたことがきっかけだった。

もっとも、今年5月21日に発表された同PMIは49.1と3カ月連続で50を割ったが、特に相場が大きく荒れることはなかった。

現段階では、株価暴落がやってくるようには見えない。そういうスタンスでいると、暴落はある日突然やってくるように見える。だが、暴落時には何らかの理由が必ずあるものだ。もし今回マーケットが急落ないしは暴落する局面があるとしたら、それは欧米が原因の可能性もあるが、中国もその「候補」の一つであることを忘れるべきではない。

もちろん、急落や暴落が来れば、格好の買い局面になる可能性は十分ある。もし2年前のような暴落が来るのなら、日本株をとりまく状況が変わったのかどうかを慎重に判断するべきだろう。変わっていないのなら、そこは「買い場」ということになる。

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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