それだけではない。中国政府はもともと、新エネルギー車の(普及を促進するための)自動車取得税の免税措置を2023年末に打ち切る予定だった。しかし景気対策の一環として、免税措置を2027年末まで延長すると6月に発表した。
これにより、EVメーカーが年末の駆け込み需要に備える必要がなくなり、10~12月期にリチウム需要が回復するというシナリオも崩れた。「一部のトレーダーが投げ売りに走り、相場下落に拍車をかけた」と、前出のアナリストは指摘する。
一方、リチウムの供給側では、過去2年間の投資ブームのなかで立ち上げられた海外資源の開発プロジェクトが続々と稼働し始めている。市場調査会社のトレンドフォースによれば、2023年の全世界のリチウム生産量は前年比4割増の121万トンに達する見込みだ。
「供給過剰を背景に、リチウム相場は今後2年間で1トン当たり10万~12万元(約203万~244万円)まで下がる可能性がある」と、前出のアナリストは予想する。
供給過剰は今後も続く
リチウム生産企業にとって、現在の市場価格はすでに一部の鉱山の生産原価に近づいている。リチウムを精製するための原料には、塩湖から採取されるかん水、固形鉱物のスポジュメン、同じくレピドライトなどがある。生産原価は、最も安いかん水が1トン当たり5万元(約102万円)未満、最も高いレピドライトが同11万元(約224万円)前後とされている。
「とはいえ、業界全体の平均生産原価は1トン当たり8万5000元(約173万円)前後だ。リチウム生産企業はまだ利益を出せるため、出荷量を減らすことはないだろう」。前出のアナリストはそう分析し、リチウムの供給過剰は今後も続くとの見方を示した。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は9月26日
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