一方、中央企業(訳注:中国の中央政府直轄の大手国有企業)である宝武鋼鉄が青山控股のインドネシア資産の買収に動いた目的は、(原材料の安定調達が期待できる)海外鉱山の権益獲得にある。すでに稼働中のプラントを買い取ることで、通常なら3~4年はかかる建設期間の不確実性を回避する思惑だった。
宝武鋼鉄は2020年8月、国有鉄鋼大手でステンレス鋼大手でもある太原鋼鉄集団を傘下に収めた。民営企業である青山控股と比べて、太原鋼鉄は生産コストが高い。青山控股はニッケル鉱石の採掘からステンレス鋼の生産まで(インドネシアで)一気通貫で行うことで、(ステンレス鋼の原料である)ニッケル鉄合金の輸送や再溶解にかかるコストを省いている。
ステンレス原料に過剰生産リスク
機を見るに敏でコストダウンに長けた青山控股は、景気サイクルの上昇局面でインドネシアの生産拠点を一気に立ち上げ、商機をつかむことに成功した。だが、市場環境は目まぐるしく変化している。
近年、インドネシアではニッケル鉄合金の生産能力が急増しており、構造的な過剰生産リスクが生じている。その一方、中国では不動産市況の悪化が続き、ステンレス鋼の需要が低迷している。
「数年前までなら、インドネシア(のニッケル関連プロジェクト)への投資にはうまみがあった。しかしニッケル鉄合金が生産過剰になり、インドネシアに投資しても利益が出るとは限らなくなった」。ステンレス業界を担当するアナリストは、現状をそう解説する。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は9月20日
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