日本郵便へ移管開始「ネコポス」終了の前途多難 荷物移管量を当初計画より抑えた「慎重な船出」

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ヤマトは日本郵便の仕事もサイトを通じて紹介する方針だが、日本郵便でDM便を担うのは社員だ。正社員と期間雇用社員(時給制の契約社員)が配達している。日本郵便はヤマトとの協業に伴い、仕分け・配達要員を募集する方針だが「個人委託ではなく期間雇用社員の募集を行い、面接等で選考の上、採用する」と説明する。

日本郵便では業務委託で「自由な時間に好きなだけ働く」という条件は準備されていない。ヤマトはメイトに対し、丁寧な説明とともに、できるだけ希望に沿った仕事を紹介するサポートが求められる。

一方、10月からはネコポスの移管がスタートする。こちらも委託会社との調整が必要になる。ネコポスはヤマトのセールスドライバーを中心に配達しているが、EC事業者向けサービス「EAZY(イージー)」の配達を担う委託会社のドライバーも運んでいる。

ネコポスがなくなる分、委託会社には追加でイージーの配送を依頼するなど荷物量の調整が必要になる。ある下請け業者は「イージーを配送しながらネコポスも運んできたのに、なくなってしまうのは困る」と不満を口にする。委託会社と良好な関係を維持していくことも課題だろう。

「スモールスタート」へ移管見直し

今後の焦点は日本郵便への移管を順調に進めることに尽きる。日本郵政の増田寛也社長は「配達までの日数など、品質を落とさないようにする。量が非常に増えるので、オペレーションをきちんと組めるよう、ヤマトのサポートを受けてやっていく」と語る。

ネコポスは当初、10月に総量20%の荷物から移管する計画だったが、「スモールスタートで確実に実施する観点からエリアを限定し、約13%の引き受けから始める」(日本郵便)と見直した。今後は段階的に引き受けを進め、2025年に完全移管する見通しだ。

日本郵便は社内に「ヤマト協業実行推進室」を設置し、ヤマトと定期的に打ち合わせをこなしてきた。本社と支社間でも毎週会議を開き、課題の洗い出しや進捗を確認している。物量の増加に合わせて、人材確保などネットワークの増強を進められるかが重要ポイントだ。

ヤマトも業務を委託するとはいえ、自社ブランドのサービスであることに変わりはない。移管でトラブルが発生すればイメージダウンにつながるおそれもある。サービス品質を保つために、日本郵便と密に連携していくことが欠かせない。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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