弁護士が明かす「論点をすり替える人」を倒す方法 誤った論理でたたみかけられた場合どうするのか

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例を挙げます。

「人間は、金持ちか貧乏かだ。貧乏とは、金持ちでない人間のことである。貧乏では一生自分の家を持つことができない」

貧乏は金持ちでないすべての人間を意味すると定義されているので、人間は金持ちか貧乏か、どちらかに分類されることになりました。

しかし、この主張には欠陥があります。次のように反論することができます。

「まず、金持ちの定義が明らかになっていない。仮に、金持ちとは1億円以上の資産を持っている人だという定義であるなら、9000万円の資産を持っている者は貧乏になる。だが、9000万円あれば、家は十分買える。また、人間は一生金持ちのまま、貧乏のままというわけではない。実際、貧乏から一代で大金持ちになった人もいるし、金持ちになったり貧乏になったりを繰り返している人もいる。したがって、この主張は誤りである」

二分法を疑うポイント

つまり、二分法の論法が出てきたときには、次のことを検討することになります。

①選択肢に示された言葉の定義は明確か
②選択肢は本当に2つしかないのか(3つ目、4つ目はないのか)
③選択肢は、性質上、あるいは時間の経過によって両立することがないと言えるか

相手の意見に同意するのは、これらの検討をした結果、確かに2つに分類できるという結論が出てからです。そうでなければ、他にも考慮するべきことがあるにもかかわらず、相手によって勝手に狭められた世界のなかで、物事を論じることになります。

相手の勝手な論理にハマって、納得してしまわないよう気をつけましょう。

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