東京電力を格下げ、さらに格下げ方向で見直しを継続《ムーディーズの業界分析》

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東京電力を格下げ、さらに格下げ方向で見直しを継続《ムーディーズの業界分析》

コーポレート・ファイナンス・グループ
主任格付けアナリスト/VPシニア・アナリスト 岡本 賢治

5月16日、ムーディーズは、東京電力のシニア有担保格付けをBaa1からBaa2へ、長期発行体格付けをBaa1からBaa3へ、短期コマーシャルペーパーのPrime-2格付けをNot Primeへ格下げしたことを公表した。本邦法令上の格付け付与日は5月16日である。なお、シニア有担保格付け、および長期発行体格付けは引き続き、格下げ方向での見直しを継続する。

格付け理由

今回の格下げは、主に下記の3点を反映したものである。

(1)福島第一原子力発電所の事故による損害が、以前に想定されていたよりも厳しいものであること。
(2)福島第一原子力発電所の事故の被害者に対する賠償金支払いに関して、一義的には東京電力が責任を負うべきという考えを政府がより強く打ち出していること。
(3)震災の後の賠償金支払いとその他の費用の支払いに関して、政府が東京電力を具体的にどのように支援するかが依然として不明であること。

東日本大震災から2カ月が経過したものの、東京電力はいまだに福島第一原発の事故の収束に向けての困難を抱えている。ムーディーズは、被害状況は以前に報告されていた水準よりも深刻であると最近判明してきたことを重要視している。状況が完全に管理できるようになるまで、東京電力が事故に対応するために負うコストや被害者に対する損害賠償は増加し続けるであろう。

5月13日、政府は原発事故の被害者に対する補償支払いと、東京電力が賠償金支払いを行いつつ事業を継続するための支援の枠組み案を発表した。今回の発表によると、政府は、国内の原子力事業者とともに支援機構を設立することで、(1)東京電力による原発事故に関する賠償金の支払いを支援し、(2)東京電力による安定的な電力供給を担保するとともに、(3)東京電力が、破綻せずに、賠償金の支払いと、信頼性の高い電力供給システムを回復・維持するために必要な設備投資を賄えるよう財政的な支援を行い、(4)国内の電力事業における今後の原子力事故に備える、としている。

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