子どもが学童を「拒否」小学生の親の両立を阻む壁 短時間勤務制度を選択できなくなる企業も多い

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2年生の子どもを持つDさん(正社員・医療系)は、「学年が上がると、放課後児童クラブに行くことを嫌がる子どもも多い。小1の壁と言われるが、1年生だけではなく中学年や高学年になっても壁は続くのでは」と話す。

Dさんは、今後学年が上がって下校時間が遅くなったときのために、子どもが1人で通える習い事を検討中だ。「いきなり1人で通うのは心配なので、地域のファミリーサポートを活用して、ボランティアの方に送迎をお願いしようかと考えています」

子どもの居場所作りのためには縦割り解消が必要

「小1の壁を解消するには、まず子どもたちが『行きたい』と思える居場所を作ることが大切だ」と指摘するのは、行政や企業と連携して、子どもたちの放課後の居場所作りや体験活動の提供を行う放課後NPOアフタースクール代表の平岩国泰氏だ。

放課後NPOアフタースクール代表の平岩国泰氏(筆者撮影)

小学生になると意思がより明確になり、Aさんの息子のように放課後児童クラブに行きたくなければ自力で帰宅できてしまう。単に学童数を増やしたところで、課題が解決するわけではない。しかし、リソースが限られるなか、子どもたちが「行きたい」と思える居場所をどのように作ればよいのだろうか。

平岩氏は、「まずは、既存の学校施設を活用するのが最も合理的」と話す。学校は大人数を収容でき、耐震も万全だ。そのうえ、広い運動場や体育館など、子どもがのびのびと遊べる施設を備えている。しかし、現状として放課後の学校活用が進まない背景には、自治体の福祉部局所管の放課後児童クラブと、教育委員会所管の学校施設との間で、いわゆる「縦割り」の問題があると聞く。

「学校や放課後児童クラブは子どもたちのための場所なので、大人の都合よりも子どもの声を聞くことが大切。学校施設を活用している事例はいくらでもあるし、子どもの願いを叶える方法を双方が考えれば縦割り問題は打破できるはず」(平岩氏)

こども家庭庁によると、子どもの居場所作りにおいては、「子どもの声を軸に『居たい・行きたい・やってみたい』の3つの視点を大切にする」としている。さらには、放課後児童クラブと、文部科学省が所管する「放課後子ども教室」(学校施設を活用した、放課後や週末の居場所作り事業)の一体化の推進の必要性を挙げている。

平岩氏は、「小1の壁については、政府が課題感を持ち社会的機運も高まりつつある。こども家庭庁が、子どもの声を聞くことを掲げ、関係機関が手を取り合って学校施設を活用するよう促していることは、明るい兆しなのでは」と、国によるさらなる働きかけを期待した。

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