子どもが学童を「拒否」小学生の親の両立を阻む壁 短時間勤務制度を選択できなくなる企業も多い

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「長男が放課後児童クラブに行くのを拒否し、放課後はまっすぐ自宅に帰ってくるようになってしまった」

長男に話を聞いても、拒否する明確な理由はわからなかったが、長男が通う放課後児童クラブは狭い部屋に子どもたちがぎゅうぎゅう詰めで過ごしていることも気がかりだ」(Aさん)と言う。

夏休みも、午前中は放課後児童クラブ、午後は民間学童で過ごすか習い事に行く予定だったが、毎朝「放課後児童クラブに行きたくない」と長男に泣きつかれ、結局午前中は毎日仕事をしながら育児をした。

子どもが自宅にいると、何かと仕事を中断せざるをえなくなることも多く、リモート会議に声が入らないか、神経をとがらせることも増えた。

Aさんは、「入学後の突発的な事態を想定して転職したが、想定外の事態が続くと時間のやりくりはもちろん、精神的にも大変。民間学童には前向きに行くものの、習い事や送迎が充実しているぶん高額で、毎日通わせるのは現実的ではない」と話す。

子どもに負担をかけてまで働く意味があるのか

インフラ関係会社の事業・営業企画として働くBさん(正社員)は、自身のキャリアも育児も大切にしたいと考えているが、「キャリアを取って職位が上がれば、責任とともに時間的拘束も大きくなるので子どもとの時間が減ってしまう。でも、育児を優先すれば、ある程度仕事をセーブしなければならず、ジレンマに陥っている。母親だけでなく、父親も同じジレンマを抱えているのでは」と話す。

なかでもBさんが気がかりなのが、子どもとのコミュニケーション不足だ。

「子どもも学童から帰ってきた後は疲れていて、夕食とお風呂を済ませたら寝てしまう。学校での様子をゆっくり聞く余裕すらない。子どもの体力や心に負担をかけてまで働く意味があるのか、最近悩むことが増えた」(Bさん)

Cさん(公務員)の職場は子どもの入学後、時短勤務制が選択できない。職場までは片道2時間かかるため、朝は6時半に家を出発し、帰りは子どもとの時間を少しでも確保するため、電車を乗り換える間も全速力で走る毎日を送っている。

「子どもの朝の準備はコロナ禍以降ほぼ在宅勤務になった夫がフォローしているが、学童へのお迎えが必須だった4月は、昼休みを15分短縮して少し早く退勤したが、それでも学童が閉まる19時ギリギリのお迎えになった。もし、学童が18時閉所だったり、夫が在宅勤務できない会社に勤めていたら、仕事を辞めざるをえなかったと思う」

またCさんも「子どもとのコミュニケーション不足に悩んでいる」と言う。

「子どもが誰と仲が良いのかなど、毎日ゆっくり話を聞けておらず心配です。帰宅後、子どもが『○○君のママが、帰り道一緒に帰ってくれた』などと話すと、子どもを見てくれたママたちにも申し訳ない気持ちになる」

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