「iPhone15」で見せつけたアップルの周到戦略 計画的な「長寿命化」がもたらしたブランド価値
一方のiPhone 15 Pro、15 Pro Maxは、システム全体が次世代仕様に底上げされている。
最高級グレードのチタン合金とアルミフレームの複合素材を搭載し、TSMCの3ナノメートルプロセスを採用した初の大規模SoC「A17 Pro」を搭載。さらにPro Maxモデルのみ、4回も光路を屈折させる特殊なプリズムを用いることで、薄さを維持したまま120mm相当の望遠レンズを実現した。
すべての構成要素が業界トップの品質を持つだが、基本的なスマートフォンとしての体験価値にさほど大きな違いはないだろう。しかしこれからの数年、さらに進化していくための基礎となるような設計が随所にみられる。
例えばA17 Proに搭載される新しいUSBコントローラは、iPhone 15とは異なり、従来の20倍の速度でデータ転送が可能だ。
高性能化されたGPU(画像処理半導体)は新たなゲーム機としての可能性を示唆していたが、むしろ戦略上は、推論処理を行う「Neural Engine」の性能が2倍高速化された点が重要だ。この回路は被写体を自動認識したり、音声認識や文字認識などの自然言語処理精度を高めたりする効果があり、長期的にiOSをアップデートする中でその本領が発揮される。
コスト上昇も予想される中、ドルベースでは従来製品と同じ価格を維持したが、システムとしては将来性をよく吟味したアップデートを施していることがわかる。
カメラ機能の向上で愛好家にも訴求
2007年のiPhone発売とともに始まった、スマートフォンによる破壊的イノベーション。iPhoneは、大型画面モデルを追加した 6/6sシリーズが主役だった2015年に売上高が急伸した後、伸び悩みに直面した。
それが再び急伸し始めたのは、iPhone 12/12 Proシリーズが主役となった2021年以降だ。iPhone 11 Proで導入し始めた「コンピュテーショナルフォトグラフィー」(演算能力による写真技術)の効果がシリーズ全体に行き渡り、機構デザインも最新のものに置き換わったのが、このタイミングである。
今回のiPhone 15 Proは、いよいよ本格的なカメラ愛好家に向けて、コンピュテーショナルフォトグラフィーというコンセプトを問う仕様になっている。
120mm望遠レンズを搭載するiPhone 15 Pro Maxは、15 Proの最低容量の2倍に相当する256GB以上のモデルのみ、価格も18万9800円からと高額だ。日本での販売の中心はiPhone 15シリーズになるだろうが、積極的に新しいiPhoneを選ぶ消費者は、このモデルに魅力を感じるだろう。
カメラ機能が期待通りの完成度であれば、iPhone XSシリーズはもちろん、iPhone 11/11 Pro世代以前のモデルからの買い替えも期待できる。
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