生物を「学ばない人」「学ぶ人」に大きな差がつく訳 社会に出た今こそ身につけたい教養とは

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現在の高校生物のカリキュラムは『生物基礎』と『生物』という2科目の単元に分かれています。『生物基礎』は文系、理系を問わず、全員が学びます。

一方、『生物』は理系の高校生の多くが学ぶことになります。このような事情や時代の流れを考慮して、『生物基礎』では、生物学の中でも特に生活、健康といった自身の生活や、将来の人生に関わってくるような項目を習えるように教科書が編集されています。

さて、『生物基礎』では、「生物多様性がなぜ重要なのか?」「遺伝子とは何か?」「血糖値とは? 糖尿病とは?」「免疫とは?」「どのような環境問題があるのか?」などを学びます。今の高校生は、文系、理系を問わずDNA、ホルモン、環境問題などについて学んでいるんです!

日本が直面している「里山の保全」という環境問題とSDGs

「森を守ろう!」といわれると、「木を切らないようにすればいい!」と思いませんか? それ……不正解です。日本が直面している「里山の保全」という環境問題を例に、その理由を説明してみようと思います。

そもそも、里山という言葉を聞いたことがありますか?

人里の近くにあり、人間の管理によって維持されてきた田畑、ため池、雑木林などの一帯のことを里山といい、古き良き日本の田園風景といったイメージの場所です。私たち人間は、生態系からさまざまな恩恵を受けながら暮らしています。例えば、食料や木材、水などの資源を得たり、災害の制御や気候の制御といった形の恩恵(生態系サービス)を得たりしています。さまざまな生物が生活する生物多様性の大きな生態系は、このような恩恵を人間に与えてくれる貴重な存在なのです。

2015年に国際的な目標として、17のSDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)が採択されました。その1つに「陸の豊かさも守ろう」というものがあります。里山の保全は、この目標の具体例の1つといえます。

里山の雑木林は、近くの集落に住む人々が燃料にするために適度に木を伐採したり、肥料にするために落ち葉などを集めたりしながら維持されてきました。このように、木を切ったり、草を抜いたりして生態系を破壊することは一般に「撹乱」といわれます。破壊とか撹乱と聞くと、ネガティブなイメージをもたれがちですね。森林伐採も撹乱ですし、台風が直撃してサンゴなどが破壊されてしまうことも撹乱です。

しかし、意外なことに、生態系では適度な撹乱が起こることで生物多様性が広がることが知られています。

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