「既存の作品と似てる」生成AIは著作権侵害なのか ビジネス利用で企業側はどう対応すればよい?
取引先に関する情報を生成AIに入力する場合、その情報が秘密情報に該当してしまうと、秘密情報保持義務違反にあたる場合があります。その情報が生成AIのデータベースに学習用のデータとして組み込まれる可能性があるからです。
守秘義務契約で、取引先から提供された情報は幅広く秘密情報に該当する、とされている場合もあり、その場合は「マル秘」「Confidential」など秘密である旨の注記がされていなくても秘密情報として保護されることになります。
各生成AIの利用規約による、提供事業者の権利や利用者の義務の規定に留意してください。たとえばMidjourneyの利用規約によれば、無料のユーザーがMidjourneyを利用して作成した成果物は、ユーザーの資産とはならず、商用利用もできないこととされています。
業務で活用するにあたっては、各サービス提供事業者が準備する利用規約を確認し、生成AIによる成果物をどのように使えるのか、自分が入力した情報がどのように利用されるのかを、あらかじめ把握しておきましょう。
求められる企業の対応
(1)成果物の利用法
ここまで解説したように、生成AIによる成果物の権利関係は、いまだ法的な解釈や考え方が固まっていないため、予測がしづらい状況です。
著作権が発生するか否か、権利侵害にあたるか否かは、その成果物の出力の経緯や、成果物の生成に利用されたデータの内容によるところもあるため、権利関係の整理には慎重な考慮が必要です。仮に権利を侵害していなくても、その成果物を見て不快に思う人もいるかもしれません。
たとえば、AIで生成したとあるキャラクター「風」のデザインの成果物を商品化した場合、画風自体は著作権の対象とはならないため、法律上は問題がないともいえます。しかし、その元となるキャラクターの作者からすれば、自分が生み出したキャラクター「風」の画像が何らの苦労もなく生成され、しかも収益化されているとなれば、よい感情は抱かないでしょう。
また、写真風の画像生成AIを利用すると、意図にかかわらず実在の人物に似た成果物が生成される場合もあり、その内容次第で、これを公開することがその実在の人物の社会的評価を下げてしまう場合もあります。この場合も、たとえ名誉毀損にはあたらず、法に違反しなくても、本人が見たらよい感情は抱かないでしょう。