まるで米国のパシリ、「日本の外交」劣化の行く末 G20中の林外相がウクライナ訪問の隠れた意味

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だからこそ、ウクライナ支援政策(すなわちロシアの孤立化)をグローバルサウスに広げるためにも、ウクライナのG20への招待が期待されていたわけだが、その期待が見事に裏切られた形となった。

つまり、このタイミングでのウクライナ訪問は、G20サミットにウクライナが招待されなかったことを補うという隠れた意味があった。G7議長国として、日本がその役割を担わざるを得なかったということだ。

アメリカに追随した格好

しかし、もちろん日本の責任感だけではなかろう。直前の9月6日、7日には、アメリカのブリンケン国務長官がやはりウクライナを訪問して、劣化ウラン弾の供与を含む10億ドル規模の新たな支援を約束している。

林外相のウクライナ訪問は、ブリンケン国務長官と歩調を合わせた形だ。そこまでアメリカに追随する必要があるのかと思ってしまうが、それが岸田外交の「基本方針」ということなのだろう。

林外相の訪問のおかげで、ウクライナ側のメンツは何とか保たれたかと思いきや、G20サミットの共同宣言がウクライナは気に入らなかったようで、「誇るべきものは何もない」とコメントした。

自らがメンバーでもないG20の首脳宣言に対して水を差すとは非常に挑発的だが、さすがは強気のウクライナ、というほかない。ウクライナからしてみれば、ロシアを名指しで非難しないような宣言には何の意味もない。

反対に、欧米と中露の対立による分断の深まりを回避し、なんとか宣言をまとめようと尽力したインドにしてみれば、部外者から水をかけられて不愉快だったろうが、「ロシアの侵略から世界を守っている」ウクライナには、そんな国際的儀礼にかまってはいられない。

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