理解する必要があるのは、男女の体の仕組みです。男性は加齢とともに男性ホルモンの分泌が減り、活動意欲も停滞します。一方、女性は閉経後から男性ホルモンの分泌が増えて、活動意欲も社交性も高まっていきます。
ところが、現在の高年世代の男性は、家事をあまりせず、妻任せにしている人が目立ちます。妻は社交性が増していてどんどん外に出て行きたいのに、「家のこともせずに、出かけてばかりいる」と夫に恨みごとをいわれ続ければ、「いい加減、別の人生を歩みたい」と思うようになって当然です。
人生100年時代といわれる現代です。「残りの人生も、この人の面倒を見ながら生きていくのか」と思えば、「離婚」の2文字が頭に浮かびます。しかし、リタイア後は妻とゆっくり過ごそうと思っていた夫は、「裏切られた」との思いに陥るでしょう。
ガマンの毎日は人生の無駄遣い
お互いを理解し合えていない状態で夫婦関係を続けても、幸せな晩年が過ごせるでしょうか。家という場所が、ストレスの原因になったときの精神的負担は計り知れません。何より、我慢しながら毎日を過ごすのは、人生のムダ遣いです。
◎「つかず離れず婚」が心を健康にする
熟年離婚や卒婚は、よく考えてみると、起こるべくして起こる現象といえます。
そもそも一夫一妻制は、人間の自然な本能に沿った制度ではなく、人類が社会化するにつれて、さまざまなルールとともに生まれた制度です。子孫を残し、子育てをしていくという本能を、高度化した人間社会に定着させるために、一夫一妻制が合理的であっただけのことです。
それも人生50年の時代であれば、問題は起こりませんでした。しかし、寿命が大幅に延びたうえに、価値観が多様化した現在、人生100年を添い遂げるべきとする従来の婚姻制度には、明らかに無理があります。
それならば、子育てが終わってからの夫婦関係は、もっと自由でよいのではないでしょうか。
現役をリタイアする65歳からは、夫婦関係を一度リセットするよい機会です。お互いに精神的に自立し、第二の人生を歩んでいく関係性を新たに築いていくチャンスです。どちらかが介護の必要な体になってからでは、リセットは難しくなります。
離婚の道を選ぶにしても、憎み合って別れるのでないのならば、ときどき会って食事をするといった、よき友人のような関係を築き直すこともできます。
夫婦関係を続ける場合には家事の分担はもちろんのこと、お互いに相手を束縛することなく自由に生きていくことが、心の健康にとって大切です。
それぞれ好きなものを食べ、好きなところへ出かけ、好きな仲間と交際し、ときには一緒に外食を楽しむ――。そんな「つかず離れず婚」こそが、65歳以降のよき夫婦のあり方ではないでしょうか。
◎一人暮らしは認知症を予防する最高の方法
人生を楽しむうえで、高年者の思考を邪魔するのが、「孤独」への恐れです。高年になると、「一人ぼっちにはなりたくない」「孤独死したらどうしよう」という発想が強くなります。これも予期不安が起こす恐れです。
現在、一人暮らしの65歳以上の高年者は、日本では670万人を超えています(少年、青年、中年を経て緩やかに移行していった先にあるという意味で、ここでは65歳以上の人々を高齢者ではなく「高年者」と呼びます)。単身の高年者が大きな事件・事故などを起こすと、高年者の孤立や孤独の問題がメディアで大きく取り上げられます。しかし、実際には、独居の高年者全員が孤独感に苛まれているわけではありません。
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