さらばランエボ!君は本当に偉大だった 三菱自動車の高性能車が残した23年の功績

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続くエボⅥは、エボⅤのまさしく熟成版といえる内容で、これをベースに、当時、WRC4連覇など破竹の勢いを見せていたトミー・マキネン選手をフィーチャリングした限定車も発売された。当時のインプレッサWRX STIがそれほど大きく変わらなかったのとは対照的に、ランサーエボリューションは代が変わるごとに激しく変わったことが印象的だった。

さらに走行性能を高めた第3世代

ランエボⅦ(写真:三菱自動車ホームページより)

そして、第3世代となるエボⅦでは、ボディが大型化されて重くなるため、遅くなるのではという危惧をものともせず、前後輪間の差動制限を電子制御する画期的な新兵器「ACD(アクティブ・センター・ディファレンシャル)」を得て、さらに走行性能を高めた。

前後とセンターに計3つのデフを持つ4WD車というのは、デフの制御によって自在にハンドリングを味付けできる。そこで三菱は、その要となるセンターデフの拘束力を積極的に制御することで走りを変化させる「ACD」を開発し、エボⅦに搭載したのだ。一方で同モデルではエボ史上で初となるAT車もラインアップされた。

その後、エボⅧでは、エボⅣより採用しているAYCの左右輪間のトルク移動量の増大を図った「スーパーAYC」や、MTを5速から6速化するなど、さらなる改良が施された。その改良版となるエボⅧMRでは、量産車世界初となるアルミルーフの採用や、エボⅨでは、エンジン性能向上に欠かせない連続可変バルブタイミング機構「MIVEC」を採用した。
また、エボⅨでは、歴代エボで初めてワゴンモデルが設定された。

こうして振り返ると、ランサーエボリューションの歴史は実に新しいものの連続だったことがご理解いただけるだろう。

インプレッサWRXが、あくまでスバルお得意の水平対向エンジンを軸としたシンメトリカルAWDの強みを活かす方向性で、電子制御にはそれほど積極的でなかったのに対し、エボは電子制御による4WDの可能性の大きさを知らしめた。その対決の構図は、よく「デジタルのエボ、アナログのインプ」などと表現された。強力な2リッターターボエンジンを積む4WDの高性能セダンというカテゴリーを確立した両車の動向は、世界中から大いに注目されたものだ。

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