円安論者も想定外、さらなる2つの「円安要因」 円安ピークアウト論の根拠「貿易収支」が不穏
もちろん、鉱物性燃料価格が上昇すれば、その他の財は価格上昇の結果として輸入が減少する側面も予見されるため5兆円すべてが輸入総額に追加されるわけではない(そうなると月間で約14兆円という輸入額としては破格の水準になってしまう)。
だが、2022年下半期の月間輸入総額に関しては、10兆円の大台が常態化していた。これは今後想定される展開である。
現状、輸出総額が月平均で8兆円程度(2023年上期実績)しかなく、上述した中国要因でその下振れが懸念されることを思えば、2022年のような貿易赤字は絶対にないとはいえない雰囲気がある。昨年のような1バレル100ドル台までいかなくとも、輸出が中国要因で低迷すれば、結果的に貿易収支は大きく傷つくことになる。
アメリカの金利が下がっても円高余地は限られる
ちなみに、本稿執筆時点(9月7日時点)のドル円相場は147円台後半まで円安に振れているが、1年前の同じ頃は143円前後だった。年初から日本の貿易収支に関し「昨年よりはまし」という論調が支配的だったのは、円安も落ち着き、供給制約解消を背景に原油価格も下落していくからというのが前提だったからだ。
しかし、足元では昨年を彷彿とさせる円安と原油価格が復活しつつある。この状況が続けば、いくらアメリカの金利が低下しても、円高余地は相当に限られるだろう。
昨年来、筆者はさまざまな角度から需給環境の変調が円安の真因ではないのかと議論してきた。「2023年後半から2024年前半にかけてはその需給環境の変調が落ち着き、米金利低下の影響が出やすくなる(端的には円高・ドル安に振れやすくなる)」という巷説はここにきて大きく揺らいでいる。
歴史的な円安相場を語る上で、再び貿易収支の行方から目が離せなくなっている。
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