円安論者も想定外、さらなる2つの「円安要因」 円安ピークアウト論の根拠「貿易収支」が不穏

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日本の世界輸出に占める中国の割合は2割弱であり、ここが伸びないと輸出全体の仕上がりに影響する。今の中国経済の情勢を見る限り、この経路で輸出が押し下げられる状況は当面続きそうに見える。

さらに悪い話だが、すでに西側諸国が中国とのデカップリングを図っていることを踏まえれば、中国向け輸出の不調はある程度、所与の条件と見るべきなのかもしれない。そう考えると、日本の世界向け輸出は従前に比べて構造的な抑制要因を抱えてしまうことになる。

原油価格は3カ月間で30%上昇

日本の貿易収支が直面する2つ目の想定外は、原油価格の上昇だ。

足元で話題となっているように、サウジアラビアやロシアの減産延長を受けて原油価格が連日高値をつけている。9月6日、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近物は1バレル87.54ドルで取引を終えているが、これはすでに1年前と同じか、少し高い水準である。3カ月前となる5月末時点と比較すれば約30%の上昇だ。

ラフな試算に基づけば、原油価格が1%上昇すれば、日本の鉱物性燃料輸入額は7%強増える。鉱物性燃料輸入は日本の輸入総額の約4分の1を占めるため、鉱物性燃料輸入額は7%強増えれば、輸入総額は2%弱(≒7%×0.25)増える計算になる。

日本の鉱物性燃料輸入額

現在、輸入総額は2023年上期実績を元にすれば月平均で9兆円程度であるため、原油価格が1%上昇すれば、月間輸入総額は1800億円程度増えるイメージだ。過去3カ月で30%上昇した結果はすぐに直近の輸入額に反映されるわけではないが、月間輸入総額が5兆円以上押し上げられる計算になる。

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