「スタートアップ」は熱狂と暗影混在の新時代に 政府政策が追い風も資金調達額の拡大傾向に陰り
京都府で最大級のイベント会場「みやこめっせ」。6月の末、そこは異様なほどの熱気に包まれていた。
熱源はスタートアップの経営幹部やベンチャーキャピタル(VC)関係者が一堂に会するカンファレンス「IVS」。コロナ禍の影響が払拭されたこともあり、開催3日間の参加者は前回(2022年7月・那覇で開催)の約5倍となる1万人超を数えた。
財務戦略について濃密に議論するものから、著名人の講演、アルコールを交えた交流会など、大小約250のセッションはどれも大混雑していた。具体的な出資検討に向けたものだろうか、VC関係者と起業家の激論もそこかしこで聞かれた。
人材流入はまるで「民族大移動」
IVSの盛況ぶりは、日本におけるスタートアップ業界の存在感の高まりを象徴している。とくに人材面は顕著で、「“民族大移動”といえるほどの流入が起きている」と、フォースタートアップスの恒田有希子タレントエージェンシー本部長は話す。
資金調達や事業成長を重ね、マネジャークラスに年間1000万円超の給与を支払える企業が増えた。
加えて、外資系銀行やコンサルティング企業、商社などに勤めるハイキャリア層は、「スタートアップに転職し一定以上の役職で成功している元同僚を目にする機会が増え、当たり前の選択肢になってきたようだ」(恒田氏)。
エン・ジャパンのスカウト転職サービス「AMBI(アンビ)」が34歳以下の若手利用者に行った調査では、スタートアップへの転職について約7割が肯定的に回答している。給与水準が比較的高い大手企業所属者に絞っても、6割近くに達する。
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