「学歴低い女性望む」中年婚活男性が知らない真実 世代で大きく異なる大学進学率で認識にズレ

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困ったことにこのような世代間格差からくる現状を無視した価値観のズレは、特に地方の結婚支援現場において、いまだに見られる光景です。20代の女性を希望する40歳男性に対して、結婚支援者が「どんどん申し込んだらいいよ」と助言して、当然ながらまったく成婚につながらず、男性もその親も「別におかしくないし、いつかは結婚できるはず」と思い込み、年齢だけが上がっていく、という弊害も見られています。

また、年の差のある男性からの申し込みの繰り返しに20代女性からクレームが出る、若い女性がイベントに参加しなくなる、といったことも見られています。結婚に関しては当事者だけではなく、その親や支援者もしっかり現実の状況を正しく認知することが大切です。

失敗なくして成長なし

そうはいっても「ワンチャンいけるかも!」という未婚男性が多いのも事実です。しかし、このように脳内婚活シミュレーションの中で「うまくいくのではないか」と思ってしまうことは、災害時などに「自分だけは例外と思い込む」正常性バイアスに陥っているとも言えます。

ある地方で、最近人気を博しつつある、列車を用いた「トレイン婚活」が実施されました。主催者側は年齢の近い男女の方が圧倒的にマッチングすることを理解していたので、1両目は20歳から35歳、2両目は30歳以上の男女が乗車可能、としたそうです。

34歳の男性が参加しており、これまでの肌感覚からイベント担当者は彼に2両目への乗車をおすすめしたのですが、(予想通り)その男性は若い女性と出会いたいとのことで、1両目に参加しました。結果は、彼に関心を示す20代女性はなく、女性に年齢が近い20代の男性がどんどん選ばれ、さらには女性のほうが年上というマッチングも多発したのです。

さすがに現実を見たのか、その男性は同じ日の午後に開催された同様のイベントに再チャレンジし、今度は1両目ではなく2両目に乗車したそうです。そして、36歳の女性と意気投合し、満面の笑顔で会場を去っていったとのことでした。

この男性のすばらしいところは、午前中の失敗を糧に、短時間で成長されたところでした。「脳内婚活」や、失敗した方法を何度も繰り返す人は、残念ながら成婚につながりにくい傾向にあります。なぜなら、結婚後の生活を考えるなら、相手の気持ちに寄り添わず、常に自分の希望の結果を期待する、もしくは、相手がNGなこと、共感しないことを何度も繰り返す可能性が高い人、とも見られるからです。

自分の好みを押し付けるのではなく、結婚後の生活においてこの人とはどういう暮らしになりそうか、年齢差よりもそちらを重視して、互いに寄り添いあえる相手にたどり着いてほしいものです。

天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー

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あまの かなこ / Kanako Amano

東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年日本生命保険相互会社入社、99年より同社シンクタンクに出向。専門分野は人口動態に関する社会の諸問題。総務省「令和7年国勢調査有識者会議」構成員等、政府・地方自治体・法人会等の人口関連施策アドバイザーを務める。エビデンスに基づく人口問題(少子化対策・地方創生・共同参画・ライフデザイン)講演実績多数。著書に『未婚化する日本』(白秋社・監修)、『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)等。

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