湾岸タワーマンションの高騰がまだ続く理由 6000万円超の売れ筋物件を買い求める人たち

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住宅資金にかかわる贈与の非課税制度も効いている。贈与の非課税枠は今年の取得分で1500万円だが、2016年10月から同3000万円まで拡充される。「ご両親からの贈与により、頭金が“厚み”を増していると感じることが多くなった」(大手デベロッパー幹部)。たとえば贈与などで頭金が2000万円用意でき、共働きで世帯年収が1000万円あれば、6000万円台以上の物件でも十分購入できる。

高まる海外からの投資熱

こうした実需に加え海外の富裕層による投資熱も高まっている。あるタワーマンションの販売担当者は4月、台湾から来た海外投資家に「横か縦一列、どちらでもいいから買わせてほしい。キャッシュで支払うから」と言われた。台湾や香港、シンガポールといったアジア系の投資家が都心のタワーマンションを積極的に購入している。

長らく続いたデフレにより、日本の不動産価格は世界的にみて相対的に低い。海外投資家からすれば、2年ほど前と比べて円安だけで20~30%の割安感がある上、東京オリンピックの開催に伴う不動産価格の上昇期待も強い。「『東京に不動産を持っている』ステータスを重視する投資家が多いため、海外でも名の通った都心5区(千代田、中央、港、渋谷、新宿区)での購入がほとんどだ」(ある不動産仲介会社の社長)。街のランドマークとなるタワーマンションは特に好まれる。

管理上の問題が懸念されることもあり、タワーマンションを供給するデベロッパー大手のほとんどは、海外投資家による購入を全体の2~3割に抑えている。一方で、「上層階の住戸では海外投資家向けの高めの値付けをしているケースがちらほらみられる」(不動産関係者)との声もある。日本人からすれば高すぎる値付けでも、円安メリットを享受できる海外投資家でれば買ってくれることがよくあるのだという。

実需と投資の両方が好調な足元は、デベロッパーにとって絶好のチャンスだ。公共工事の増加で施行費が高水準であることも、マンション価格を上げる動機となっている。東京オリンピックまで、あと5年。湾岸タワーマンションの価格が下げ止まる様子はまだ見られない。

前野 裕香 ライター

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まえの ゆか / Yuka Maeno

1984年生まれ。2008年に東洋経済新報社に入社し記者・編集者として活動した。2017年にスタートアップ企業に移り、広報やコンテンツ制作に従事。現在はフリーランスライターとしても活動中。

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