処理水問題で中国猛反発を「想定外」とする拙劣さ 岸田首相が「語る力」を示せないと政権危機加速
ただ、処理水海洋放出を受けた大手メディアなど各種世論調査の結果をみると、国民の間で「放出への一定の理解」が多数派となった反面、「政府の説明不足」との反応は半数を大きく上回っている。さらに政界でも、24日放出に至った経緯を踏まえ「政権側の都合だけを優先した弥縫策の積み重ね」(立憲民主幹部)との批判が相次ぎ、30日の与野党協議の結果、9月8日に衆院で閉会中審査を実施することが決まった。
「中国はいずれ国際社会で孤立」と強気だが…
こうした状況下、岸田首相ら政府・与党幹部は「そもそも放出している処理水の安全性は国際原子力機関(IAEA)のお墨付きを得ているし、国際社会の大多数が今回の日本の対応を理解している」(官邸筋)と力説。「異常な対応を続ける中国は、いずれ国際社会で孤立する」(自民幹部)と表向きは強気の構えだ。
しかし、中国国内では「すべての日本製品の不買運動」が広がり、中国発とみられる国際電話での嫌がらせなども急拡大。官公庁の関係部署だけでなく、食料品や飲食の個別店舗まで「嫌がらせ抗議電話」に悩まされ、商売に悪影響を及ぼすような状況が続いている。
もちろん、中国在住の日本人の不安は拡大するばかりで、政府は駐中国の日本大使館広報から「外出の際は大声で日本語を話すことは控えてほしい」などと要請している。こうした中国の現状には、「日本政府が尖閣諸島を国有化した際に、中国国内で反日デモが続発、デモ隊が暴徒化して日本の店舗などを襲撃した状況に似てきた」(在中国の日本人経営者)との見方も広がる。
そもそも、独裁体制を確立した習近平主席が下した「全面禁輸措置」は、「面子にこだわる中国にとって、振り上げた拳は余程のことがない限り降ろすはずがない」(日中関係者)のは当然だ。「いくら政府が科学的根拠に基づく協議を求めても、中国は取り合わない」(同)という状況は、年単位での長期化となる可能性が少なくない。
その一方で、「その間、日本の対中貿易が停止・凍結状態になれば、日本国内の影響だけでなく、中国の経済危機にもつながる」(同)ことも想定され、「まさに我慢比べの状況に陥るが、解決への展望はまったく見通せない」(日中議連幹部)からだ。
すでに、日本国内でも中国の対応についての批判、反発が拡大の一途。SNS上などでも「中国の製品は廃棄すべき」「中国大使館に抗議デモをかけろ」などの書き込みがあふれている。
その一方で、多くの国民の間で、福島原発事故とその後の政府と東電の対応について、「両方とも嘘つき。まったく信用できないとの声が根強い」(福島県幹部)のも事実。それだけに、今後、世論調査で際立つ「説明不足」との批判に対し「岸田首相が『語る力』を示せないと、衆院解散どころか政権危機を加速させるだけ」(自民長老)との不安は広がるばかりだ。
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