新聞業界が難癖「NHKテキストニュース」の行方 「地方紙のデジタル化」が成功しない納得理由

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また、新聞協会が個々の有識者にアプローチしていたことも聞こえてきた。「ローラー作戦があった」と言う関係者もいる。新聞業界の窮状を訴えて回ったようだ。あくまで「お願い」レベルだろうし、有識者の多くは話を聞いて参考にしただけだろう。だが、これまでと明らかに違う空気になっていたのはその影響もあったのではないか。

政界にもアプローチ?

さらに、新聞業界は政界にもアプローチしたと思われるふしがある。

自民党には「情報通信戦略調査会」という部会があり、主に放送の今後を考える議員たちが勉強会を行ってきた。7月12日には新聞協会が呼ばれたが、その主張に調査会は強い批判を浴びせたと伝わっている。

ところが8月23日、同調査会がまとめた「提言」の内容が伝わってくると驚いた。新聞協会の主張にかなり配慮したものだったのだ。

「情報通信戦略調査会 提言(案)」と題されたその文書は、6ページ分びっしり書かれた濃密な内容。全体としては現状の課題を網羅し24項目にも及ぶ提言を詰め込んだ、よくできた文書だと思う。

NHKのインターネット業務についても、ネットでの情報配信を必須業務化する必要があると書かれている。ところが、その後の文章で「テキスト情報をはじめとした理解増進情報は特に新聞業界から見直しが求められていた」と、突然新聞業界の主張を入れてきた。そのうえで、「現行の理解増進情報の提供に関する制度は一旦廃止」と提言している。これはテキストニュース廃止論を受け入れたということか?

7月12日の調査会では批判された新聞協会の主張が、なぜ土壇場で入ってきたのか。有識者への「ローラー作戦」と似た動きがあったのでは、と邪推したくもなる。地方紙の幹部が自民党議員を訪ねて回ったとのうわさも入ってきた。

ただ新聞業界が有識者や政治家にアプローチするのはいわゆるロビー活動であり、それ自体には何の問題もない。政治家を頼るのは、権力監視を掲げるメディアとしてどうかとは思うが。ここで問題なのは、その主張が一般市民の不利益になることだ。今読めているニュースが読めなくなるという、国民の知る権利を損なうことを、言論機関たる新聞社が主張するのはどんな了見か。

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