新聞業界が難癖「NHKテキストニュース」の行方 「地方紙のデジタル化」が成功しない納得理由

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新聞協会はこれに対し、「NHKプラス」の必須業務化にも反対だし、テキストニュースは廃止せよ、と主張しているわけだ。

新聞業界はネットでのビジネス化に悩んでおり、中でも地方紙は最近デジタル化に着手したのでなかなか伸びておらず、NHKがネットでローカルニュースを展開するのはその妨げになる、と言うのだ。

国民の「知る権利」を奪うのか

フェイクニュースの横行でネットの言論空間への不安が高まる中、NHKのテキストニュースは自分たちの邪魔になるからやめろというのはエゴでしかない。もちろん地方紙も頑張ってもらいたいが、これまで読めたニュースを失うことは、国民にとって不利益だ。新聞業界は、国民の知る権利の一部を奪うと言っているも同然だ。

これまで、「公共放送WG」では新聞協会の主張はあまり正面から取り上げられてこなかった。いつも「民業圧迫」の一点張りで意見書の内容は毎回さほど変わらず、WGではスルー気味だった。そもそも民放連と違ってオブザーバーでさえないから当然ではある。

ところが、8月10日の「公共放送WG」はこれまでと様相が変わっていた。この回も新聞協会が出席していたのだが、いつもよりずっと発言数が多かった。有識者たちも新聞協会に気を遣っていたように見えた。「NHKテキストニュース廃止論を考慮すべき」との前提で話が進んでいた。

有識者の中には、NHKが災害情報を無料で提供することも、抑制的であるべきとまで言う人もいた。災害情報は命に関わるものなのに、なぜ新聞協会の主張に肩入れするのかと驚いた。

逆に新聞協会に明確に反論した有識者もいた。「現状から大幅に後退することになり、一般市民に不利益を与えることでもあり賛成できない」。よくぞ言ってくれましたと私は喝采した。

ただ、いつもなら長く発言する有識者が短いコメントにとどめたり、とにかくこのときのWGはぎこちない空気に包まれていた。

あとで情報収集したところ、どうやら新聞協会に「ガス抜き」をさせようとの“作戦”があったらしい。一度言わせておくだけのつもりだったかもしれないが、傍聴している私には「公共放送WGは新聞協会の言い分を大幅に認めた」と映った。「NHKプラスのネット単独受信料」を通すために、「テキストニュースは廃止する」ということなのだろうか?

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