熊本電気鉄道、郊外輸送担う「代替バス」の現在 一部区間廃止後、自社バスで鉄道と連携を強化

拡大
縮小

ほどなく、富の原から旧菊池市に入り、市街地の中を進む。終点であった菊池駅は、そのまま熊本電気鉄道のバスターミナルとなっている。ここが「菊池プラザ」と呼ばれているところ。菊池駅廃止直前の1985年に完成した建物で、そのままの形で現存している。

ホームや線路などは、隣接する幼稚園の場所にあった。壁面に掲げられている切り抜き文字は「・バスターミナル」となっているが、「・」の前には、「電車」の文字があったことが古い写真から確認できる。この先、バスは菊池市中心部の温泉街へと進む。

鉄道代替の性格は薄れた

菊池プラザは基本的に、鉄道廃止後のバスターミナル整備の一環として建設された建物だ。ホームへは裏口のようなところから入るようになっていた。しかし今では、レストランなどテナントもほぼ撤退してしまっており、バスの案内所兼定期券売場も閉鎖。わずかな数のベンチが置かれ、辛うじてバスの待合室として利用されているだけだ。

掲げられている「昭和59年5月1日現在」とされた運行系統図は、御代志―菊池間の鉄道こそ入っていないものの、バス路線は廃止区間をガムテープで修正を試みた跡が痛々しく、それでも急行バスがまだあるようになっているなど、今ではまったく用をなしていない。

それでも誰も気にしないほど、バスターミナル自体が機能していないと見られる。鉄道廃止から40年近くが経過。路線バスも鉄道の代替という性格は薄れてしまい、当たり前のバスになって久しい。

この記事の画像を見る(6枚)
「鉄道最前線」の記事はツイッターでも配信中!最新情報から最近の話題に関連した記事まで紹介します。フォローはこちらから
土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT