熊本電気鉄道、郊外輸送担う「代替バス」の現在 一部区間廃止後、自社バスで鉄道と連携を強化
廃止区間の代替は、同じ熊本電気鉄道が経営する路線バスによって行われた。同社の熊本―隈府(菊池)間のバスは、1929年には早くも営業を開始しており、鉄道の一部廃止に伴う新設系統ではない。1957年には急行バスも設定。バブル期には2階建てバスまで走らせていた。
九州新幹線が全線開業した2011年から2013年の間には、温泉客を当て込んで、停車バス停を絞りハイデッカー車を投入した特急バスも設定されている。もともと、バスにとっても菊池方面は“ドル箱”であったのだ。
現在、菊池方面へのバスは、蓮台寺入口を主な始発、終着として、JR熊本駅、桜町バスターミナル、通町筋といった熊本市の中核部を経由し、御代志で鉄道と接続したうえで菊池温泉へ至る。
つまり、残った鉄道と廃止代替との位置づけの路線バスが、藤崎宮前―御代志間ではおおむね並行して走っている。この区間は沿線に学校や病院などが多く立地していて利用が多く、鉄道が存続した。一時は鉄道全廃が打ち出されたこともあったが、現在では存続を前提に電車や線路などに投資が行われ続けている。
移転した鉄道とバスの接続駅
鉄道の本線のターミナルの藤崎宮前は、熊本市電など他の鉄道との接続がない、孤立した駅だ。駅前に乗り入れる路線バスは少なく、菊池方面行きを含めて主な運転系統は、近くの国道3号線上の藤崎宮前バス停に発着する。
乗り継ぎ駅の御代志は、2005年の時点で人口約3万人に迫っていた旧西合志町。現在は合志市の中心部に所在する。かつては国道387号線に面したところに駅があり、1面のホームと線路が1本だけ設けられていた。
一部区間廃止時には、ホームのすぐ対面には菊池方面からのバスを横付けするように発着させ、熊本市内方面へは楽に電車に乗り継げる構造に改築された。このような構造は、後に富山ライトレール(現在の富山地方鉄道富山港線)の岩瀬浜駅などにも採用され、シームレスな交通体系の構築に一役買うことになる。御代志駅は、その先駆けのような存在であった。
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